2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

「途上国研究の最先端」(アジア経済研究所)─論文紹介コーナー

www.ide.go.jp 2021年8月20日閲覧 アジア経済研究所のIDEスクエア内に設けられている特設コーナー。途上国に関連する新しい論文を、各分野の専門家が紹介するという内容である。現時点で50の研究が取り上げられている。 全体を眺めて、私が特に興味をもった…

『数理社会学の理論と方法』(小林・海野編2016)

数理社会学の理論と方法 (数理社会学シリーズ) 作者:盾, 小林,道郎, 海野 勁草書房 Amazon 「数理社会学シリーズ」の中の1つ。数理社会学における代表的な理論をわかりやすく紹介している(合理的選択理論、社会ネットワーク分析など)。 方法論を扱った後半…

『健康格差社会』(近藤2005)

健康格差社会―何が心と健康を蝕むのか 作者:克則, 近藤 医学書院 Amazon 現代日本における格差と健康を論じた書籍。どのように人々の心と健康に不平等が生じているのか。職業やライフコース、学歴、地域などの社会・人口学的要因は健康をどのように規定して…

『戦後台湾における〈日本〉』(五十嵐・三尾編2006)

戦後台湾における〈日本〉―植民地経験の連続・変貌・利用 風響社 Amazon 植野弘子・三尾裕子編『台湾における<植民地>経験─日本認識の生成・変容・断絶』(風響社、2011年)の姉妹編。併読することで、台湾における植民地経験がより一層多面的に見えてきま…

『台湾における<植民地>経験』(植野・三尾編2011)

台湾における〈植民地〉経験―日本認識の生成・変容・断絶 風響社 Amazon 台湾が「親日的」であると言う場合、台湾では日本統治時代が肯定的に評価されていることがしばしば挙げられる。 しかし、そもそも台湾はイメージ通り本当にそうなのだろうか?仮に「親…

『族群』(王2014)

族群―現代台湾のエスニック・イマジネーション (台湾学術文化研究叢書) 作者:王 甫昌 東方書店 Amazon 台湾の社会学者・王甫昌氏による『當代台灣社會的族群想像』(群學出版社、2003年)の日本語訳版。 族群(エスニシティー)概念の説明から始まり、台湾の…

『日本人論の方程式』(杉本・マオア1995)

日本人論の方程式 (ちくま学芸文庫) 作者:良夫, 杉本,ロス・マオア 筑摩書房 Amazon 日本人論の少なからぬ書籍では、格言、歴史上の人物の言動録、著者の国内外での体験などを題材として「日本人は〇〇である」と評されることがある。 しかしながら、そうし…

『「日本人論」再考』(船曳2010)

「日本人論」再考 (講談社学術文庫) 作者:船曳建夫 講談社 Amazon 日本では様々な「日本人論」が語られ、書籍として出版されてきた。古くは『武士道』『菊と刀』などの古典から始まり、概ね高度経済期からバブル期にかけては『「甘え」の構造』『ジャパンア…

『 現代日本の「社会の心」』(吉川2014)

現代日本の「社会の心」 -- 計量社会意識論 作者:吉川 徹 有斐閣 Amazon 調査票調査データを用いて統計的に人々の心を分析する分析視角や方法論などがわかりやく論じられている。今日の社会学における重要な論点である、環境、健康、消費などの意識が幅広く…

『階層・教育と社会意識の形成』(吉川1998)

階層・教育と社会意識の形成―社会意識論の磁界 (MINERVA社会学叢書) 作者:吉川 徹 ミネルヴァ書房 Amazon 社会意識論の重要書。人々の価値観を実証社会学的に分析するとはどういうことなのかを論じている。そのための方法論の論述に紙幅を割き、計量社会学を…

『福祉資本主義の三つの世界』(エスピン・アンデルセン2001)

福祉資本主義の三つの世界:比較福祉国家の理論と動態 (MINERVA福祉ライブラリー47) 作者:イエスタ エスピン‐アンデルセン ミネルヴァ書房 Amazon エスピン・アンデルセンによる福祉社会の比較歴史社会学の重要書。 近代化・社会主義化といった単線的な軸で、…

『文化行動の社会心理学』(金児・結城編2005)

文化行動の社会心理学―文化を生きる人間のこころと行動 (シリーズ21世紀の社会心理学) 作者:暁嗣, 金児,雅樹, 結城 北大路書房 Amazon 1990年以降、飛躍的に発展した文化心理学の知見を特に社会心理学と関わるトピックを論じたテキスト。宗教・法律・医療・…

『社会心理学』(池田・他2010)

社会心理学(補訂版) New Liberal Arts Selection 作者:池田謙一,唐沢穣,工藤恵理子,村本由紀子 有斐閣 Amazon 近年刊行された社会心理学のテキストの中で質量共に充実したテキスト。最新の研究成果と豊富な事例に基づながら社会心理学の全体像がつかめるよ…

『残留日本兵』(林2012)

残留日本兵 アジアに生きた一万人の戦後 (中公新書) 作者:林英一 中央公論新社 Amazon 台湾の日本統治時代関係の調べものをしている中で読んでみた作品。戦後アジア各地に残った日本兵たちのライフコースを、膨大な日記・ルポルタージュ・映像作品から網羅的…

『圧縮された産業発展』(川上2012)

圧縮された産業発展―台湾ノートパソコン企業の成長メカニズム― 作者:川上 桃子 名古屋大学出版会 Amazon 台湾はノートパソコン生産の世界シェア90%以上といわれる。低コストの下請け企業として誕生したメーカーが急激な成長を遂げたメカニズムを、丹念なイン…

『東北タイの開発僧』(櫻井2008)

東北タイの開発僧 作者:櫻井義秀 梓出版社 Amazon タイにおいて教育や地域開発、福祉事業などの各種開発を行ういわゆる「開発僧」と呼ばれる僧侶たちへの丹念な聞き取り調査に基づいた実証的な宗教研究・地域研究。 「宗教と社会貢献」「タイ研究の動向」「…

『社会調査のための統計学』(神林・三輪2011)

社会調査のための統計学 -生きた実例で理解する- (現場の統計学) 作者:神林 博史 ,三輪 哲 技術評論社 Amazon 社会調査向け統計解析のテキスト。記述統計を中心にクロス集計や統計的検定、疑似相関と因果関係などについてわかりやすく書かれている。表や図…

『創造の方法学』(高根1979)

創造の方法学 (講談社現代新書) 作者:高根正昭 講談社 Amazon 社会科学方法論の古典。理論とは何か、概念とは何か、モデルとは何か、理論をどのようにして具体的なデータで検証するのか、条件を統制するとはどういうことなのか、といったことが著者のアメリ…

『データはウソをつく』(谷岡2007)

データはウソをつく―科学的な社会調査の方法 (ちくまプリマー新書) 作者:谷岡 一郎 筑摩書房 Amazon 特に社会調査に基づいた報道記事を読む際のコツについて多くのページが割かれている。実際のデータ分析の段取りや科学的分析のロジックについても初学者向…

宗教の計量的国際比較研究(Norris and Inglehart 2012)

Sacred and Secular (Cambridge Studies in Social Theory, Religion and Politics) (English Edition) 作者:Norris/Inglehart Cambridge University Press Amazon 世界最大規模の国際比較価値観調査データの1つであるWorld Values Survey(世界価値観調査)…

『変革期における社会運動の研究』(野宮1998)

kaken.nii.ac.jp 2021年8月6日閲覧 幕末日本の農民運動がどのような社会構造的要因によって発生したのかを統計的に検討した歴史社会学的研究。 江戸時代日本の農民と武士の階級的対立の議論から始まり、農民運動が発生する要因に関する理論的考察、そしてそ…

『心でっかちな日本人』(山岸2010)

心でっかちな日本人 ――集団主義文化という幻想 (ちくま文庫) 作者:山岸 俊男 筑摩書房 Amazon 社会学者・社会心理学者の山岸俊男氏の著作。 「いじめの原因は、子供たちの倫理感の欠如である。だから、これからは子供たちの道徳心や倫理観を高める教育を行う…