YouTubeやTikTokを質的データとして分析するために─Southerton氏による解説動画

 YouTubeなどの動画サイトを見ていると、文化人類学民俗学社会学などのフィールドワークに含まれるような動画をしばしば見かける。たとえば、旅行者が檳榔やカート、カヴァ、コーラなどを試してみた動画、その製造現場や販売店舗を訪れてみた動画である。Twitterなどでもやはりそのようなものに関する写真や動画が投稿されている。海外旅行者のみならず、現地の人々の投稿も少なくない。

 一昔、あるいは二昔前であれば、こうした営為はフィールドワーカーの半ば牙城であったと推察する。フィールドに赴いて食文化や儀礼を観察し、その結果をモノグラフとして学術雑誌や現地レポートに発表することが主たる研究活動であり、その成果が研究業績になる。映像資料も含まれていれば、より一層ユニークな研究成果になろう。ジャーナリズム、ルポルタージュもおそらく似たような構図があるだろう。

 しかしながら、動画サイトにおける投稿を見ると、これらはフィールドワーカーの牙城とまでは言い切れなくなりつつあるかもしれない。優れたフィールドワークになっている印象を受けるからである。アマチュア研究者や在野研究者という概念がある。この点で言えば、動画サイトやSNS、ブログなどで現地の情報を発信する営為は、学術的な意図はなくとも、結果的にアマチュア研究、在野研究になっていると考えることができる。

  フィールドワークの成果に限らず、動画サイトなどには興味深い情報や見解が投稿されていることがしばしばある。これらの状況を踏まえるならば、動画サイトなどの動画をどのように考えていくのかというテーマは、今後の喫緊の課題と言えるかもしれない。

 以下の二つの動画は、社会学者のClare Southertonによる解説動画である。それぞれYouTubeTikTokの質的データとしての意義、それらを分析するための工夫を解説したており、示唆的である。

(1)YouTube

 YouYubreに投稿されているデータのタイプ、Social Media Ethnographyという概念、先行研究、データ使用上の留意点などが整理されている。

youtu.be  2021年4月3日閲覧

 (2)TikTok

 こちらはTikTokに関するものである。コロナ以降のTikTok利用者の増加などに触れつつTikTokが重要な質的データであることが指摘されている。理論的背景、データ収集法などに言及されている。コロナに関するハッシュタグを取り上げながら、分析過程が解説される。

youtu.be  2021年4月3日閲覧