ポルノを視聴すると信仰が弱まるのか(Perry and Hayward 2017)

www.ncbi.nlm.nih.gov

  • Perry SL, Hayward GM. Seeing is (Not) Believing: How Viewing Pornography Shapes the Religious Lives of Young Americans. Soc Forces. 2017 Jun;95(4):1757-1788. doi: 10.1093/sf/sow106. Epub 2017 Jan 10. PMID: 28546649; PMCID: PMC5439973.

  宗教とポルノに関する社会学的研究は、関心の主軸を宗教においたものとポルノにおいたものにわけることができるだろう。本論文は前者、つまり宗教社会学的なポルノ研究に含まれるだろう。ポルノ視聴がアメリカの宗教状況にどのような影響を与えるかを検討している。

 ポルノ視聴が信仰の弱まりに影響を与えるという関係性の解明をより確実にするために、National Stuides of Youth and Religionというパネルデータの二次分析がなされている(パネルデータの分析方法は筒井・他(2016)が詳しい)。このデータは宗教調査データアーカイブスのARDAで公開されており、二次分析が可能である。興味のある方は分析に挑戦されたい。

 結果を大掴みにすると、確かにポルノを視聴すると信仰が弱まるという結果が確認されている。ポルノを視聴する若年層の増加を踏まえるならば、今後のアメリカの宗教状況において、ポルノを通じて、信仰が弱まる可能性があるのではないかと示唆している。 

雑感

 イントロダクションでも触れられているが、これまでの宗教とポルノに関する研究は、ポルノ視聴の規定要因としての宗教、あるいは反ポルノ意識の規定要因としての宗教を論じるものが中心である印象を抱いていた。しかし本論文は世俗化の進展をポルノ視聴から予測するという点が斬新だと思われる(ここでいう世俗化とは何らかの形で信仰に薄い人が、人口の多くを占めてくる社会変動を意味している)。

 ポルノ視聴が先か、信仰が先かという因果関係の問題は、パネルデータによってある程度解決してみる。日本でも同様の分析ができればよいが、ここまでのパネル調査を行うのは難しいかもしれない。

 「Empirical Background and Theoretival Framework」では、若年層のポルノ視聴から始まり、ポルノと宗教に関する先行研究と理論が詳細に整理されている。

 参考文献リストを見ると著者のPerry氏は、これまでにポルノの社会学的研究を発表してきており、興味深いタイトルが並んでいる(このブログで以前取り上げた宗教とコロナ対策行動の関係に関する研究(Perry et al. 2020)も行っていた(関連記事))。引き続き読み進めてみよう。

参考文献

  • Perry, S.L., Whitehead, A.L. and Grubbs, J.B. (2020), Culture Wars and COVID‐19 Conduct: Christian Nationalism, Religiosity, and Americans’ Behavior During the Coronavirus Pandemic. Journal for the Scientific Study of Religion, 59: 405-416. https://doi.org/10.1111/jssr.12677
  • 筒井淳也・水落正明・保田時男編(2016)『パネルデータの調査と分析・入門』ナカニシヤ出版。