『質的社会調査の方法』(岸・他2016)

  質的調査法のテキスト。書評に西澤(2017)、福田(2019)がある。

 質的調査全般に関する解説から始まり(序章)、フィールドワーク(第1章)、参与観察(第2章)、生活史(第3章)と進む。節と項が細かく設定され、質的調査の諸側面を鳥瞰することができる。私が特に興味深く感じたのは、第3章の生活史である。ここでは生活史調査の方法を、生活史の代表的著作を通じて理解する部分が設けられている(pp.173-192)。生活史研究の学説史を学ぶことができる。コラムでは、調査にかかる経費の問題(p.55)、写真を使い方の問題(p.138)など、より実践的な議論がなされている。もっとも、コロナによる調査環境の変化を考えると、本書で取り上げられる質的方法は、困難になりつつあるのかもしれない。新版が出版される暁には、コロナ時代の質的調査というテーマの章も、是非追加して欲しいところである。

参考文献