寺沢重法のブログ

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松崎道幸・日本禁煙学会理事、ファンの発言は監督本人の発言か?─「映画の喫煙シーンはタバコを吸う子どもを増やす」

  たばこと表現規制に関して、真塚なつき氏のツイートに興味深いものがあった。

 話題になっているのは、日本禁煙学会理事の松崎道幸氏が発表した 「映画の喫煙シーンはタバコを吸う子どもを増やす」という文章である。真塚なつき氏のツイートをなぞりつつ、私も確認してみよう。

 まず、取り上げられているのは「映画の喫煙シーンはタバコを吸う子どもを増やす」 という文書である。著者は日本禁煙学会理事の松崎道幸氏である。

www.jstc.or.jp  2021年5月3日閲覧

 発表年が記載されていないのでいつのものかわからない。引用文献内のアクセス日からするとおそらく2013年ではないかと思われるが(o.13)、サイト更新年の2016年をひとまずの発表年にしておく。

 内容は、映画における喫煙シーンが若年層の喫煙を促進することを示し、日本も喫煙シーンを規制すべきだという政策提言をするものである。

 真塚なつき氏によると、アニメ監督の富野由悠季氏が、映画の喫煙シーンに問題ありとコメントしていると述べられているが、その参照元は富野氏のコメントではなく、富野氏のファンのサイトであるという。

 スクリーンショットを元に確認してみよう

 まず、「富野氏のコメント」が書かれているのは「喫煙シーンのある映像作品を PG12」という章である(p.11)。松崎氏は富野氏が以下のコメントをしているとし、引用している。 

(「風立ちぬ」が)レーティングG(映倫レーティングの「どなたでもご覧になれます)であるからには、表現の仕方もそれに見合うものが要求されます。これは作家を邪魔するものでもなんでも無く、当たり前のことです。そういう意味では、今回の一件に関して、日本の映画倫理委員会には責任があると言わざるを得ません。ジブリ作品だから全部レーティングG図10(16)という判断は、正直今の日本の姑息主義を反映するものがあると感じます。仮にPGならば、誰も文句を言わないのでしょう。(太字引用者。括弧内は引用者追加)

 

 (出典)松崎道幸(2016)「映画の喫煙シーンはタバコを吸う子どもを増やす」p.11。赤字と太字は元々加えられている。斜体は寺沢重法が削除した。

 続けて、富野氏が「喫煙シーンのある映画作品を、子どもに見せる場合に十分な制度的配慮(保護者と一緒に見る(=PG12)、喫煙の有害性に関する警告を上映時に行うなど)をするのが当然であると主張している(17)」(松崎2016:11)と述べているという(赤字は元々加えられている)。

 なお「風立ちぬ」というのは、日本禁煙学会が宮崎駿監督作品『風立ちぬ』の喫煙シーンに抗議をした話である。

www.huffingtonpost.jp  2021年5月3日閲覧

 松崎氏の上の文章に戻ると、確かに富野氏のコメントだととれる。だが、脚注17を辿ると、どうもそうではないらしい。引用文献一覧の17のURLである(p.13)。

kaito2198.blog43.fc2.com  2021年5月3日閲覧

  サイト名は「TOMINOSUKI/富野愛好病」であり、台湾のファンが運営している。ファンのサイトである。松崎氏は、この記事の以下の文章を引用したものと思われる。

 しかし、作品自体から離れるところから見ると、この苦言はやはり一理あると思います。子供は影響されやすいものですし、レーティングGであるからには、表現の仕方もそれに見合うものが要求されます。これは作家を邪魔するものでもなんでも無く、当たり前のことです。

 そういう意味では、今回の一件に関して、日本の映画倫理委員会には責任があると言わざるを得ません。ジブリ作品だから全部レーティングGという判断は、正直今の日本の姑息主義を反映するものがあると感じます。仮にPGならば、誰も文句を言わないのでしょう。

 

(出典)TOMINOSUKI / 富野愛好病 『風立ちぬ』の喫煙シーン、およびタバコ演出に頼らない富野由悠季の考え方(2021年5月3日閲覧)。太字は元々加えられている。

  サイト運営者が書いたものである。富野氏の発言は、この文章のさらに下で引用されている(富野氏の『映像の原則』の「第7章ビギナーの実務」)

 富野氏は、安直な表現や演出一般を批判しており、その一例として、演技が上手くない役者にはとりあえずたばこを持たせておく、という例を挙げている。他にも八の字眉の女性の例が挙げられている。映画のたばこシーンそのものを批判しているというわけではない。ファンは以下のように述べる。 

考えなしに喫煙の演技をやっちゃうのは、やはり一種のルーチンワークのように感じます。いや、もっと悪いのはルーチンであることすら気づかないことでしょう。そしてこれこそが、富野監督が苦言を呈したいことでしょう。

(出典)TOMINOSUKI / 富野愛好病 『風立ちぬ』の喫煙シーン、およびタバコ演出に頼らない富野由悠季の考え方(2021年5月3日閲覧)。 

 真塚なつき氏は次のように締めくくる。

  確かに面白い。