「中国における世代間同居意識の規定要因」(朱2015)

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  • 朱安新(2015)「中国における世代間同居意識の規定要因―大陸と台湾の大学生の比較を通じて」『理論と方法』30(2):307-317。

 中国大陸と台湾おける世代間同居意識を分析した論文。華人社会の複数の地域を分析する比較社会学的研究になっている。

 規定要因として、社会政策、都市・農村関係、価値観、親の階層という局面が取り上げられている(pp.309-311)。

 データは著者が2013年に大陸(江蘇省南京大学)と台湾(淡江大学)で実施した調査であり(p.311)、二項ロジスティック回帰分析が使用される(pp.312-314)。

 独立変数は、社会政策には「一人っ子ダミー」、都市・農村関係には「都市ダミー」、価値観には「親孝行規範」と「父系規範」、親の階層には「出身家族の社会階層」が使用される(p.311)。

 主な結果として、大陸、台湾ともに「父系規範」が有意、(父系規範が高い人は世代間同居意識が高い傾向にある)、大陸においてのみ「都市ダミー」が有意であり(都市戸籍の人は世代間同居意識が低い傾向にある)、「一人っ子ダミー」と「出身家族の社会層」は有意でない(pp.312-314)。

雑感

  • 一人っ子か否かについて、台湾で有意でないのはさほど意外ではないが、大陸でも有意でないという結果は意外だった。私見の範囲の実感としては、今日の大陸における価値観は一人っ子との関連で論じられることもあるように思うが、世代間同居意識については特に目立った関連は見出されないのかもしれない。
  • 親孝行規範は世代間援助の重要な要因とされてきた。たとえば、Lin and Yi(2019)は親孝行規範は福祉政策に対する考え方などに関連があると指摘する(Lin and Yi 2019)。だが、本論文では親孝行規範は有意ではない。親に対する意識よりも、家族内での役割や責務に基づくのだろうか。
  • 親孝行規範と父系規範の関連について、単相関などを含め、もう少し詳しく見てみたいように思う。

参考文献

  • Lin, J.-P., & Yi, C.-C. (2019). Dilemmas of an Aging Society: Family and State Responsibilities for Intergenerational Care in Taiwan. Journal of Family Issues, 40(14), 1912–1936. https://doi.org/10.1177/0192513X19863204