台湾の右派イメージを振り返るためのメモ─『台湾総統列伝』(本田2004)を確認

 日本におけるここ数年の台湾のイメージは、ひまわり学生運動同性婚、オードリー・タン、蔡英文などに代表されるような、比較的リベラルなものである。

 もっとも二昔前以前はどちらかと言えば、保守派、右派との結びつきのイメージがあったように思われる。この結びつきが戦後台湾のイメージを色々な形で形成してきたと推察する。本田善彦氏の『台湾総統列伝─米中関係の裏面史』がこの問題をまとまった形で指摘している。手に取りやすい本であるため、メモをしておく。

 「第五章 歪められた台湾像─日米中の狭間で」に該当記述がある。

まず一つは、主に日本の右派勢力の「反共台湾」への期待が、長期にわたって日本の台湾観を呪縛した点だ。最近でこそ台湾を好意的なイメージで語る人が増えたように感じるが、かつての日本で、台湾のイメージはダーティーで、ほとんどタブーに近い存在だった。(p.288)

 

(出典)本田善彦(2004)『台湾総統列伝─米中関係の裏面史』中央公論新社:288。

このうち国府台湾に群がる面々には、政界内の右派人士や右翼系政治結社の関係者も多く、彼らの存在が「台湾や中華民国」のイメージに胡散臭さを与えた点も否めない。

 

(出典)本田善彦(2004)『台湾総統列伝─米中関係の裏面史』中央公論新社:289。ふりがなは省略した。

 この時代の台湾イメージがどこまで薄れたのかはわからない。だが、このイメージ故にに台湾に対する「苦手意識」をもつ人もいるのではないかと思われる。「苦手意識」である。台湾そのものではなく日台関係史に対する「苦手意識」である。
 「東日本大震災に台湾から日本に支援金が送られ、その恩返しとして日本が台湾にワクチンを送る、そしてそことに台湾の人々が感謝する。」一見すると何でもないやり取りに対して「違和感」を覚える人がいるとすれば、その背景にはこうした戦後日台関係史が関係している可能性が考えられる。
 戦後の日本で形成された台湾の政治的イメージにどう向き合っていくのか。

 参考文献