『宗教、術數與社會變遷(一)』(瞿2006)

更新2021年7月3日

 台湾の社会変動の中で宗教と術數がどのような状況にありかつ変容しつつあるのかがテーマである。なお「術數」は呪術、占い、オカルト等などの多様な現象を意味し、明確な日本語表現に置き換えことは容易ではない。ここでは大野(2014)に倣って術數のまま表記しておく。本書では主に1990年代に台湾で実施された調査の分析が収録されている。著者の瞿氏のサイトで中国語版、英語版が公開されており、フリーアクセス可能である。

  目次で内容を概観してみる(「再販序」等は除いた)。

  • 第一章 台灣宗教變遷之探討(瞿海源・姚麗香)
  • 第二章 台灣民眾的宗教信仰與宗教態度
  • 第三章 台灣的民間信仰
  • 第四章 宗教信仰與家庭觀念
  • 第五章 民間信仰的基本特徵與奉獻行為(瞿海源・張珣)
  • 第六章 塵世的付出,來世的福報:台灣社會中的宗教捐獻現象 (劉怡寧・瞿海源)
  • 第七章 解析新興宗教現象
  • 第八章 台灣新興宗教信徒之態度與行為特徵
  • 第九章 術數、巫術與宗教行為的變遷與變異
  • 第十章 術數流行與社會變遷
  • 第十一章 占星、星座在台灣的流行
  • 第十二章 台灣外來新興宗教發展的比較分析(瞿海源・章英華)
  • 附錄一 瞿海源教授宗教研究論著及指導博碩士論文目錄
  • 附錄二 台灣地區民間宗教的發展:寺廟調查資料之分析(余光弘)
  • 附錄三 寺廟神壇糾紛案例之分析(朱永昌)
 多くは因子分析や重回帰分析を駆使した計量分析である。例えば、第十章から十一章では気功や先祖供養等に関する数十個の観測変数から、伝統的宗教意識に関する潜在変数を抽出し、様々な術數等の実践や信念について、これらの潜在変数との関連性を回帰分析で検証する。取り上げられる術數の一部を見てみると、「算命」「改運」等(p.286)が扱われている。術數の社会学的研究として貴重であるに違いない。
 新宗教が取り上げられている点も興味深い(第八章、第十二章)。特に第八章は、術數の分析と同じような手続きで台湾の新宗教信者の潜在的宗教意識も論じられる。具体的な団体名を一部見てみると、台湾の団体以外にも、創価学会、真光といった日本の新宗教も取り上げられている。新宗教研究としても貴重な研究であろう(台湾における日本の新宗教の研究として寺田(2009)がある)。
参考文献