寺沢重法のブログ

研究に関連する論文や書籍、時事問題、資料などの紹介と雑感のメモ Twitterプラスアルファが目途 セクシュアリティ、たばこ、台湾、檳榔、宗教、金融、社会調査法etc

『社会の見方、測り方』(与謝野・他編2006)

 計量社会学ためのテキスト兼ハンドブック。
 記述統計、相関分析、クロス表分析、平均値の比較、重回帰分析、パス解析、共分散構造分析、マルチレベル分析、ネットワーク分析、因子分析、主成分分析、ブール代数分析など基礎から応用まで非常に幅広い手法が紹介されている。

 単に手法を説明するだけではなく、具体的な社会現象(自殺、都市化、階層など)をそれらの手法で分析するというスタイルで書かれている。そのため統計的手法で社会現象を分析するという計量社会学の醍醐味がいかんなく発揮されたテキストである。
 本書をより正確に読みこなすためには社会統計学の基礎知識や計量分析の実習経験などがあった方がよいと思われるが、れらがなかったとしても本書各章の基本的な考え方は理解できる。社会学社会心理学政治学、経済学、社会医学などを専攻する人にとって特に興味深いテキストだと思われる。

 姉妹編に『社会を<モデル>でみる』がある。こちらは数理社会学のテキストである。
※この記事は、北海道大学付属図書館主催企画「本は脳を育てる」に寄稿した紹介文を大幅に加筆修正して再掲したものです。 

『よくわかる質的社会調査─技法編』(谷富・芦田編2009)

 社会調査の中の質的調査について、様々な技法が紹介されている。インタビュー、フィールドワーク、グランデッド・セオリー・アプローチ、ライフヒストリー法、ワークショップ、アクションリサーチ、内容分析などが扱われる。各調査の理論的背景や心構えよりも、むしろ具体的なやり方を詳しく説明されている。調査対象者とどのようにコンタクトを取るのか、インタビューデータをどう整理するのか、ワークショップを開催するための具体的な話が豊富である。手元に置いておくと便利な一冊である。
 本書の姉妹編に「プロセス編」もある。本書と併読することによって質的社会調査の理解が一層深まるだろう。

※この記事は、北海道大学付属図書館主催企画「本は脳を育てる」に寄稿した紹介文を大幅に加筆修正して再掲したものです。 

『社会調査の計量分析』(川端編2010)

 大阪大学のSRDQシステムを用いて計量分析を学ぶためのテキスト。本書の最大の特徴は、SRDQに寄託された本物の社会調査データの分析を行えることにある。
 テキストの各章ではその分析方法を用いた論文が提示される。まず、この論文を読み、次にテキストを見ながらSRDQ(ネット環境があればどこでも使用可能)を使ってその論文の分析を再現する。最後に章末の練習問題を解くことでより分析のコツがのみこめるようになる。
 実際の論文を読みその分析を追体験しながらするという実践的スタイルが目玉である。分析方法はクロス集計、平均値の比較、重回帰分析、パス解析、ロジスティック回帰分析、因子分析、クラスター分析など計量社会学でよく使われる分析方法が一通り盛り込まれています。特に社会学専攻で計量分析を独習してみたい人はまず本書で学んでみると良いだろう。

※この記事は、北海道大学付属図書館主催企画「本は脳を育てる」に寄稿した紹介文を大幅に加筆修正して再掲したものです。

『地域産業変動と階級・階層 』(布施編1990)

 北海道大学教育学部の故・布施鉄治教授率いる「布施グループ」による調査モノグラフ。地域は北海道の産炭地夕張であり、大学院生・学部学生総出で、炭鉱関係者の生活史を調査したモノグラフである。対象者は炭鉱職員・鉱員・その家族など、ほぼ「ローラー作戦」で聞き取り調査をしている。そこから夕張における階層・階級構造、労働者の入炭経緯、ライフスタイル、将来への展望などが浮かび上がってくる。北海道社会史としても極めて貴重な書籍である。初版は1982年。
 なお「布施グループ」による調査には夕張の他にも、水島・倉敷などで行った調査がありそれらも出版されている。

※この記事は、北海道大学付属図書館主催企画「本は脳を育てる」に寄稿した紹介文を大幅に加筆修正して再掲したものです。

台湾で最も重要な歴史的人物は誰か?(2013年)

 2013年に実施された台湾社会変遷基本調査(Taiwan Social Change Survey)の集計結果をメモ。

 対象は台湾全土、18歳以上、実施主体は中央研究院社会学研究所である。問55に台湾で後世に伝え最も尊敬されるべき人物を1人選ぶという設問が設けられている。蒋経国李登輝孫中山孫文)などが選択肢ととしてリストアップされ1つを選ぶ形式である(傅・他主編2014:213)。集計結果を以下の表に整理した。

表 後世最も記憶にとどめ尊敬されるべき歴史的人物(2013年実施のTaiwan Social Change Suvey)
  度数 %
毛沢東 11 0.6%
林献堂 22 1.1%
孫中山孫文 727 37.7%
渭水 61 3.2%
周恩来 5 0.3%
謝雪紅 4 0.2%
鄧小平 14 0.7%
蒋中正/蒋介石 106 5.5%
李登輝 166 8.6%
蒋経国 594 30.8%
その他 74 3.8%
陳水扁 12 0.6%
陳定南 7 0.4%
孔子 5 0.3%
誰もいない 121 6.3%
合計 1929 100.0%
(出典)傅仰止・章英華・杜素豪・廖培珊主編(2014)『台灣社會變遷基本調查計畫第六期第四次調查計畫執行報告』中央研究院社會學研究所(2021年7月18日取得、https://www2.ios.sinica.edu.tw/sc/cht/datafile/tscs13.pdf)の「55. 請問您覺得哪一位歷史人物最值得後人景仰和紀念?」(p,213)より寺沢重法作成。DKおよびNA回答は除いてある。

 第1位は孫中山孫文)の37.7%であり、それに第2位の蒋経国30.8%が続く。孫中山蒋経国で少なからぬ部分を占めている。第3位は李登輝である(8.6%)。第2位の蒋経国との差は小さくない。

雑感

  • 本田(2004)には歴代人気総統のアンケート結果が取り上げられ、蒋経国が高く評価されていることが紹介されていた(本田2004:200-205)。2013年時点でも比較的似た結果の印象がある。
  • 日本では李登輝が台湾を代表する歴史的人物として相対的によく知られていると推察するが、台湾における位置づけはいささか異なるのかもしれない。

参考文献