台湾の安保観

mainichi.jp 台湾の安保観に関して、毎日新聞で紹介された呉叡人氏のインタビューの中の興味深い指摘。 そもそも、台湾人の多くは日本の内政に興味がありません。安全保障環境の悪化から自国を守るための軍拡を疑問視する人も、ほとんどいません。日本での憲…

台湾のリベラリズムとナショナリズムのバランス

www.asahi.com 朝日新聞の李琴峰氏のインタビューより。 台湾では、自由や人権といった普遍的な価値観を掲げるリベラリズムの動きと、ナショナリズムの動きは密接に関わり合ってきましたが、衝突することもあります。そして両者が衝突した場合、優先されるの…

『謎の島・台湾 別冊宝島127』(1991)

謎の島・台湾―いま台湾に興奮するワケ! (別冊宝島 (127)) 宝島社 Amazon 別冊宝島シリーズの中の1冊。刊行は1991年であり、約30年前の「台湾本」である。書影には「ベンツに乗りロレックスで身をかためる七十万人の社長たちがいる」という言葉がある。 「第…

「上海における伝統文化受容のパターン」(廣瀬2019)

ci.nii.ac.jp 廣瀬毅士(2019)「上海における伝統文化受容のパターン─2017年統計調査データを用いた実証分析」Journal of Global Media Studies 25:65-78。 近年の中国における伝統文化の隆盛(ブームによるもの、政府によるもの)を踏まえ、中国における…

『健康格差社会』(近藤2005)

健康格差社会―何が心と健康を蝕むのか 作者:克則, 近藤 医学書院 Amazon 現代日本における格差と健康を論じた書籍。どのように人々の心と健康に不平等が生じているのか。職業やライフコース、学歴、地域などの社会・人口学的要因は健康をどのように規定して…

『日本人論の方程式』(杉本・マオア1995)

日本人論の方程式 (ちくま学芸文庫) 作者:良夫, 杉本,ロス・マオア 筑摩書房 Amazon 日本人論の少なからぬ書籍では、格言、歴史上の人物の言動録、著者の国内外での体験などを題材として「日本人は〇〇である」と評されることがある。 しかしながら、そうし…

『「日本人論」再考』(船曳2010)

「日本人論」再考 (講談社学術文庫) 作者:船曳建夫 講談社 Amazon 日本では様々な「日本人論」が語られ、書籍として出版されてきた。古くは『武士道』『菊と刀』などの古典から始まり、概ね高度経済期からバブル期にかけては『「甘え」の構造』『ジャパンア…

『 現代日本の「社会の心」』(吉川2014)

現代日本の「社会の心」 -- 計量社会意識論 作者:吉川 徹 有斐閣 Amazon 調査票調査データを用いて統計的に人々の心を分析する分析視角や方法論などがわかりやく論じられている。今日の社会学における重要な論点である、環境、健康、消費などの意識が幅広く…

『階層・教育と社会意識の形成』(吉川1998)

階層・教育と社会意識の形成―社会意識論の磁界 (MINERVA社会学叢書) 作者:吉川 徹 ミネルヴァ書房 Amazon 社会意識論の重要書。人々の価値観を実証社会学的に分析するとはどういうことなのかを論じている。そのための方法論の論述に紙幅を割き、計量社会学を…

『文化行動の社会心理学』(金児・結城編2005)

文化行動の社会心理学―文化を生きる人間のこころと行動 (シリーズ21世紀の社会心理学) 作者:暁嗣, 金児,雅樹, 結城 北大路書房 Amazon 1990年以降、飛躍的に発展した文化心理学の知見を特に社会心理学と関わるトピックを論じたテキスト。宗教・法律・医療・…

『社会心理学』(池田・他2010)

社会心理学(補訂版) New Liberal Arts Selection 作者:池田謙一,唐沢穣,工藤恵理子,村本由紀子 有斐閣 Amazon 近年刊行された社会心理学のテキストの中で質量共に充実したテキスト。最新の研究成果と豊富な事例に基づながら社会心理学の全体像がつかめるよ…

『心でっかちな日本人』(山岸2010)

心でっかちな日本人 ――集団主義文化という幻想 (ちくま文庫) 作者:山岸 俊男 筑摩書房 Amazon 社会学者・社会心理学者の山岸俊男氏の著作。 「いじめの原因は、子供たちの倫理感の欠如である。だから、これからは子供たちの道徳心や倫理観を高める教育を行う…

「誰が東京オリンピック・パラリンピックに賛成し、反対するのか」(高峰2019)

m-repo.lib.meiji.ac.jp 高峰修(2019)「誰が東京オリンピック・パラリンピックに賛成し、反対するのか─東京都大島町住民を対象とする意識調査より」『明治大学教養論集』 (538):213-233。 コロナ禍の現在、東京五輪開催の支持─不支持をめぐって連日議論が…

世界価値観調査のInglehart氏が死去

www.worldvaluessurvey.org 2021年5月26日閲覧 youtu.be 2021年5月27日閲覧 世界価値観調査(World Values Sruvey、WVS)のリーダーとして知られるRonald Inglehart氏が2021年5月8日に亡くなられた。 WVSは最も著名な国際比較調査の1つとして知られる。開始…

嗜好品研究に関する論集・テキスト

アルコール、コーヒー、茶、たばこなどを「嗜好品」という枠組みで検討する研究である。以下、重要なものを4点挙げる。 嗜好品文化を学ぶ人のために 作者:高田 公理 発売日: 2008/04/20 メディア: 単行本(ソフトカバー) 嗜好品研究の嚆矢となるテキストで…

台湾社会とエスニシティについての考え─寺沢(2017、2018)

更新2021年6月8日 ci.nii.ac.jp ci.nii.ac.jp いわゆる本省人と外省人というカテゴリーで見ることは、今日の台湾社会を理解する上ででどこまで有用なのか。全土調査を少し分析した経験からすると、必ずしも有用というわけではないと感じる。以下、上記、寺沢…

「ゲーム史探訪 高橋名人の目から見たファミコンブーム」(小山・他2009)

更新2021年5月31日 ci.nii.ac.jp 小山友介・三宅陽一郎・高橋利幸(2009)「ゲーム史探訪 高橋名人の目から見たファミコンブーム」『デジタルゲーム学研究』 3(2):205-219。日本デジタルゲーム学会のサイトにあり。 ファミコンの歴史を、高橋名人を通じて…

「パチンコ・パチスロをする人々」(谷岡2005)

更新2021年5月31日 ci.nii.ac.jp 谷岡一郎(2005)「パチンコ・パチスロをする人々-JGSS-2002によるプレイ比率、頻度、そして使用金額に関する研究」『日本版General Social Survey研究論文集[4]JGSSで見た日本人の意識と行動JGSS Research Series No.1』…

『嗜好品の謎、嗜好品の魅力』(成蹊大学文学部学会編・小林盾・中野由美子責任編集2018)

更新2021年5月13日 嗜好品の謎、嗜好品の魅力:高校生からの歴史学・日本語学・社会学入門 (成蹊大学人文叢書) 発売日: 2018/04/06 メディア: 単行本 嗜好品を包括的に取り上げた代表的書籍としては、これまでに『嗜好品文化を学ぶ人のために』『嗜好品の文化…

『「意識」とは何だろうか』(下條1999)

更新2021年5月30日 「意識」とは何だろうか―脳の来歴、知覚の錯誤 (講談社現代新書) 作者:下條 信輔 講談社 Amazon 本書のメインとなる主張を私なりに一言で要約してしまうと、「人は、自らの意識によって主体的に行動していると実感するが、必ずしも主体的…

『日本人の心理』(南1956)

更新2021年5月30日 日本人の心理 (岩波新書) 作者:南 博 岩波書店 Amazon 日本人の心理的特性を扱った代表的な書籍である。1953年初版の相対的に古い書物ではあるが、今でも十分読み応えのあるものだと感じた。本書の特徴は、江戸時代の各種養生所や処世書に…

「JGSS-2005にみる日本の心理主義」(保田2006)

更新2021年5月31日 ci.nii.ac.jp 保田直美(2006)「JGSS-2005にみる日本の心理主義-心理学知識と心理還元主義の擬似相関」『研究論文集[6]JGSSで見た日本人の意識と行動』119-130。JGSSのサイトにあり。 心理学化、心理主義化、心理還元主義という現象…

変革期中国都市部における社会構造とパーソナリティー(Kohn et al.2012)

更新2021年5月31日 academic.oup.com Melvin L. Kohn, Weidong Wang, Yin Yue, Social Structure and Personality during the Transformation of Urban China: A Comparison to Transitional Poland and Ukraine, Social Forces, Volume 91, Issue 2, Decemb…

アフリカ系アメリカ人における飲酒(Martin et al. 2003)

更新2021年5月31日 pubmed.ncbi.nlm.nih.gov Martin JK, Tuch SA, Roman PM. Problem drinking patterns among African Americans: the impacts of reports of discrimination, perceptions of prejudice, and "risky" coping strategies. J Health Soc Beha…

自殺の社会学(Wray et al.2011)

更新2021年5月31日 Wray,Matt, Cynthia Colen,and Bernice Pescosolido(2011)"The Sociology of Suicide"Annual Review of Sociology" 37:505-528.https://doi.org/10.1146/annurev-soc-081309-150058 自殺の社会学の近年の動向を整理したレビュー論文。デュ…

「遺族の死別後の主観的変化とその影響要因」(河野2013)

更新2021年5月31日 ci.nii.ac.jp 河野由美(2013)「遺族の死別後の主観的変化とその影響要因─ストレス関連成長の視点から」『ヒューマン・ケア研究』14(1):12-20。 遺族の心理プロセスを分析した論文。心理学分野に属する。ストレスという点に焦点を当てて…

「自殺願望の規定要因に関する一考察」(森田2008)

更新2021年5月31日 ci.nii.ac.jp 森田次朗(2008)「自殺願望の規定要因に関する一考察─JGSS-2006データによる分析 」『日本版General Social Surveys研究論文集』7:107-119。(JGSSのサイトにあり) 自殺願望経験の規定要因を二次データを用いて分析した論…

2009年新型インフルエンザの台湾におけるワクチンなどの摂取(Chan et al. 2014)

更新2021年5月27日 journals.plos.org Chan TC, Fu Yc, Wang DW, Chuang JH (2014) Determinants of Receiving the Pandemic (H1N1) 2009 Vaccine and Intention to Receive the Seasonal Influenza Vaccine in Taiwan. PLOS ONE 9(6): e101083. https://doi…

「「ふつうさ」の固有文化心理学的研究」(大橋・山口2005)

更新2021年5月31日 ci.nii.ac.jp 大橋恵・山口勧(2005)「「ふつうさ」の固有文化心理学的研究─人を形容する語としての「ふつう」の望ましさについて」『実験社会心理学研究』44(1):71-81 。 人を形容する際に「ふつう」という表現を使う場面は少なくない…

資料:精神的健康と宗教

2020.6.13(旧サイト「寺沢重法のサイト」における最終更新日) 宗教と精神的健康・主観的ウェルビーイングに関連する文献情報です。本コーナーは以下の口頭発表用資料に基づき、その後、アップデート加筆修正を行ったものです。 寺沢重法(2015)「宗教とウェ…