宗教的メッセージを加えた警告画像入りたばこパッケージ(Kaplan et al. 2019)

更新2021年5月30日閲覧

www.ncbi.nlm.nih.gov

  • Kaplan B, Hardesty JJ, Martini S, Megatsari H, Kennedy RD, Cohen JE. The Effectiveness of Cigarette Pack Health Warning Labels with Religious Messages in an Urban Setting in Indonesia: A Cross-Sectional Study. Int J Environ Res Public Health. 2019 Nov 5;16(21):4287. doi: 10.3390/ijerph16214287. PMID: 31694236; PMCID: PMC6862042.

 たばこの警告パッケージに関する心理学的研究。ムスリムは喫煙しない傾向にあるという先行知見を踏まえ、たばこパッケージの警告画像にイスラム教に関連する文言を入れた場合の効果を検証するのが目的である。対象国はインドネシア、被験者はムスリムである。

 方法としては、自殺、二次喫煙、壊死という三つの現象に関する警告画像を設定し、それに宗教的な文言を入れたものと、入れないものを作成する。これを被験者に呈示して喫煙や喫煙の意図を回答してもらうというものである。また、被験者の信仰熱心さも尋ね、信仰の度合いとの関連も確認している。

  総体的な結果は、宗教的なメッセージを入れてもさほど効果は変わらないという。壊死に関する警告画像については、宗教的な文言を加えた場合の方が若干高い効果が見られるようである。さらに、信仰熱心な被験者の場合、宗教的であろうとなかろうと、警告が効果をもつことが指摘される。

 雑感を述べる。宗教的メッセージの有無よりも、信仰の熱心さによって警告画像自体の効果が異なるという点が興味深い。この結果は、信仰熱心ではない人の場合、どのような警告文を用いてもあまり効果は見られないということを示唆しているように思われる。

 宗教という文脈から離れて考えると、何らかのメッセージによって喫煙を避けるようになるというよりも、もともと何かしらの価値観をもつ人々、規範などを共有する人々が、警告によって喫煙を避けるようになるということになるのだろうか。

 議論の部分では、イスラム教とたばこに関する議論が、既存の実証研究を丹念に追いながら深められている。宗教とたばこを検討する上で、特にイスラム教に対する関心が不可欠であることを実感した。