更新2021年5月30日
最初に言及しておきたいのは、本作品を成人向けコンテンツと呼ぶのは難しいのではないかということである。成人向けに見えるというそれだけの理由で見過ごされるのは勿体ないように思われる。収録されているのは「檳榔西施」という呼称で知られる、台湾の檳榔売りの女性である(Wikipediaの「檳榔西施」の日本語版と中国語版のリンクを掲載する)。
ja.wikipedia.org 2021年4月6日閲覧
zh.wikipedia.org 2021年4月6日閲覧
確かに、檳榔西施自体が台湾では煌びやかな存在である(羽田2008、野林2008)。その意味で本作品のパッケージは檳榔西施イメージと共鳴する部分があると考えることもである。 しかしながら、内容を見てみると殊更成人向けコンテンツという印象は特段受けない。収録時間約50分のほとんどが檳榔西施の仕事場の様子を静かに映している。グラビアアイドルのようなシーンも収録されているものの、殊更性的な誇張を伴っているわけではない。檳榔西施や檳榔を知るための映像として、本作品はまず最初に挙げるべきものだと思われる。
もっとも、要望がないわけではない。まず、仕事の様子は豊富に収録されているものの、檳榔西施へのインタビューなどは見られない。檳榔西施自身が日々の仕事をどう捉え、どのような日常を送っているのか、どのような経緯で檳榔西施になったのか。このような点についてもう少し掘り下げが欲しかったところである。
また、檳榔西施と檳榔そのものについて、ある程度の前提知識が求められる印象も受けた。たとえば、パッケージの表面には簡単な解説が書かれているものの、檳榔の噛み方や作り方についてはもう少し詳しい説明が必要だと思われる。本作品ではガラス張りの檳榔店が取り上げられるが、そうではないタイプの檳榔店などの紹介があってもおもしろいかもしれない。陳水扁政権時代は檳榔西施の規制が進み、本作品が発売された2009年はかつてほど目立つものではなくなっていたのではないかと推察する。
本作品を紹介したサイトに以下のものがある。
note.com 2021年4月6日閲覧
昨年は檳榔西施をテーマとした『檳榔美少女』というコミックも発売されている。
- 「【版権ご紹介】盧卡斯『檳榔美少女』(コミック/遠流/2020)」(太台本屋 tai-tai books、http://taitaibooks.blog.jp/archives/26886176.html、2020年11月08日、2021年4月6日閲覧)
参考文献