- 廣瀬毅士(2019)「上海における伝統文化受容のパターン─2017年統計調査データを用いた実証分析」Journal of Global Media Studies 25:65-78。
近年の中国における伝統文化の隆盛(ブームによるもの、政府によるもの)を踏まえ、中国における伝統文化がどのように受容されているのかを、上海を調査対象地に検討した論文。伝統文化受容の規定要因に対して、「愛国心仮説」「国民意識仮説」「生活スタイル志向仮説」が設定されている(p.66)。
測定法が詳しく論じられている点が魅力の1つだと思われる。たとえば、中国の伝統文化に指標について、「中国料理」「漢服・唐装・旗袍など 伝統衣装」「伝統様式の建築物」「陶磁器」「茶藝や工夫茶」「漢詩(中国詩)」「書法」「京劇などの 伝統国劇」「囲碁・将棋」「寺社」(p.67)を設定し、これらに対する志向を尋ねている。そのうえで、潜在クラスモデルを使用して、パターンを検討している(pp.69-73)。
著者は和風志向を東京都で調査しており(廣瀬2019)、本研究はその比較研究として位置づけることができる(p.65)。設問も東京都の調査を踏まえたものになっている。併読することで日中それぞれの特徴がより明瞭になってくるものと推察する。
参考文献
- 廣瀬毅士(2019)「ローカル文化受容のパターン分類と規定要因 ―和風志向は「ぷちナショナリズム」か」『東京通信大学紀要』1:59-72。