台湾の現在地(公研)

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 台湾研究者の清水麗・川上桃子両氏の対談。前半は1990年代からの日台関係の変化、後半は国際関係や経済を中心とした台湾情勢が話題である。

 特に前半では、日本で台湾が語られる時に見受けられる「台湾は親日である」という言説、調査対象者が日本語世代に偏る傾向にあったこれまでの研究の限界、昨今の「リベラルで先進的な台湾」という描写の問題などが論じられている。仕事や留学などの何らかの形で台湾と関わってきた経験がありつつも、その経験の中で形成された自身の台湾認識と日本で発信されている台湾関連情報との間に隔たりを感じている人にとっても、示唆に富む対談だと思われる。

清水 その通りです。一方で、日本人が流暢に日本語を話す台湾の方の話を多く聞き、それに基づいて台湾の研究を行ってきたことの問題点も、指摘されてきました。日本統治期を経験した人の中で日本語が流暢に話せる方は、実際にはごくわずかしかいません。しかし、その方々の話を基に多くの研究が行われてきたので、台湾研究は台湾の日本語人の語りに基づいて展開しすぎてきました。

川上 当然のことながら、台湾の社会には深い政治的対立がありますし、政府への不満も未解決の問題もたくさんあります。そういった部分にもしっかりアンテナを張っておかないと、台湾のゆくえは理解できません。台湾に日本に欠けているものを仮託したくなるのですが、そこに台湾を「自分を慕ってくれる出来のいい弟・妹」と見なす視点がまぎれこんでいないか、一歩引く必要があると思っています。その上で、いかに多面的な台湾像を提示できるか。台湾研究者として気をつけたいところです。