『帝国主義と世界の一体化』(木谷1997)

 

更新2021年5月30日 

   帝国主義に関する比較史的論考である。目次は以下のようになっている。

 帝国主義とはなにか
 1 多彩な帝国主義理論
 2 パラダイムの転換
 3 グローバリゼーション
 4 労働力の大移動
 5 支配・差別・排除
 6 ヨーロッパの分裂と「周辺」民族主義のめざめ
 第1章と第2章で帝国主義に関する諸理論を概観したうえで、第3章以降は交通機関の発達やそれに伴う人の移動の変容、支配・差別に関する社会心理(社会ダーウィニズム、優生思想)、対戦への「周辺」諸国の動員、民族独立など、個別の現象が比較を視野に入れて論じられる。
 これらの中の帝国主義に関する諸理論を論じた第1章と第2章では、帝国主義・植民地に関する社会学領域における諸理論なども幅広く紹介されている。たとえばレーニン、ホブソン、ウォーラースティンなどの論考が取り上げられている。
 植民地や帝国主義に関する社会学的モノグラフに関しては、George Steinmetzの"The Sociology of Empires, Colonies, and Postcolonialism,(Annual Review of Sociology 40,2015,pp.77-103)が詳細なレビューを行っているが、本書と合わせて読むと、この分野の理論がいろいろと掴めそうである。