更新2021年4月21日
金門島は台湾に長く関心を向けているとしばしば耳にする場所に違いない。中国大陸の厦門の近くに位置する島であり、かつては両岸の戦争の最前線として機能していた。当時の大砲を素材として作った包丁などで知られるなど、観光地としての役割も担いつつあるようである。
なお、金門島は長らく中華民国の中の福建省として実効支配されてきた。台湾本島は中華民国の台湾省である。金門島は台湾省ではなく福建省である。いわゆる「領有権問題」が関わる場所でもある。観光であれ歴史であれ、いずれの点においても興味深い場所である。詳細は、Wikipediaではあるが、以下のリンクを参照されたい。
ja.wikipedia.org 2021年4月21日閲覧
それでは、そのような金門島についてどのような研究が行われているのか。ここでは、日本で行われた研究をリストアップしてみる。2000年以降のもので狭義の学術研究に属するものをピックアップしてみる(J-STAGEなどを使用)。特集記事の巻頭言や報告要旨などはのぞいてある。以下の通りだ(新しいものから順に並べてある)。
- 林涛(2020)「観光の真正性についての一考察―金門島における中国人インバウンドの事例から」『愛知大学国際問題研究所紀要』155:265-285。
- 金戸幸子(2020)「金門島・厦門旅行記─生活圏が一体化する金門島と厦門」『火輪』41:44-55。
- 佐藤元彦(2019)「「境界地域」研究と金門島」『愛知大学国際問題研究所紀要』154:23-50
- 武井基晃(2018)「金門島の砲弾鋼刀─国共内戦戦跡のしたたかな名産品」『歴史人類』46:88-78。
- 長野真紀・今村文彦・黄國賓(2016)「東アジアの離島集落に見る住まいの変容と生活文化―台湾金門島及び八重山諸島石垣島を事例に」『芸術工学2016』。
- 松本はる香(2013)「フォトエッセイ 金門島─中国と台湾のかつての前哨戦の地」『アジ研ワールド・トレンド』19(10):29-32。
- 江柏煒・Szonyi Michael・阿部由美子「国家、地方社会とジェンダー政策─戦地金門の女性の役割およびイメージの再現」『地域研究=JCAS Review』11(1):88-128。
- Szonyi Michael・福田円・太田雄三(2011)「軍事化・記憶・金門社会─一九四九-一九九二年」『地域研究=JCAS Review』11(1):62-87。
- 川島真(2011)「僑郷としての金門─歴史的背景」「金門島研究─その動向と可能性」『地域研究=JCAS Review』11(1):43-61。
- 川島真(2011)「中国のフロンティア(3) 金門島─中国の内なるフロンティア(上)」『UP』40(11):34-42。
- 川島真(2012)「中国のフロンティア(4) 金門島─中国の内なるフロンティア(下)」『UP』41(1):22-30。
- 川島真(2011)「金門島の概況」『地域研究』11(1):16-19。
- 盧泰康・野上建紀(2009)「澎湖群島・金門島発見の肥前磁器」『金沢大学考古学紀要』30:90-100。
- 漆原和子・陳国彦(2007)「澎湖列島と金門島における防風のための石垣」『国際日本学』5:127-150。
大まかな特徴として、
(1)工学や考古学関係のものが確認される。
(2)かつての戦場としての政治的側面を論じたものが確認される。
(3)ライフスタイルや産業に関するものが確認される。
というところだろうか。