超常信念がワクチンへの信頼とCOVID-19ワクチンの接種にどう関連しているのかを分析した論文

  • Katie E Corcoran, Christopher P Scheitle, Bernard D DiGregorio, Paranormal Beliefs, Vaccine Confidence, and COVID-19 Vaccine Uptake, Sociology of Religion, Volume 84, Issue 2, Summer 2023, Pages 111–143, https://doi.org/10.1093/socrel/srac024

 超常信念(paranomal beliefs)がワクチン信頼(vaccine confidence)とCOVID-19ワクチン接種( COVID-19 vaccine uptake)行動に同関連しているのかを分析した論文。

 アブストラクトの便宜的日本語訳。

保守的宗教的イデオロギーはワクチン躊躇と関連してきた。しかしながら、超常信念がワクチンへ信頼と接種にどう関連しているのかはほとんど知られていない。本研究の仮説は、超常信念は、科学に対する低水準の信頼と陰謀信念のより大きな受容ゆえに、信頼と接種の両方に対して負の関連をもつ、というものである。NORCによって2021年5月と6月に成人のアメリカ人を対象に実施された、新しい全国規模の代表性のあるサンプリング調査を使用して、仮説を検証する。1734人のサンプルに回帰モデルを使用した結果、超常信念は、一般的ワクチン信頼、COVID-19ワクチン信頼、COVID-19ワクチン接種との間に負の関連があることが明らかになった。この関連は科学に対する信頼と陰謀信念の統制によって、部分的あるいは完全に減少する。本研究の焦点ではないが、キリスト教ナショナリズムとアウトカムとの負の関連は、科学への信頼と陰謀信念の尺度で完全に説明されることも明らかになった。

一貫道の海外での活動に関する研究いくつか

 備忘録。

 韓国の一貫道。

www.jdre.org

 タイの一貫道の女性信徒。

online.ucpress.edu

 タイの一貫道。

cir.nii.ac.jp

  • 林,育生『Yiguan Dao in Thailand: A New Religious Organization in Contemporary Thai Buddhist World』(2017年京都大学博士論文)

 オーストリアの一貫道。

muse.jhu.edu

  • Yeh-Ying Shen The Expansion of the Andong Division of Yiguan Dao in Austria Journal of Chinese Religions 2021 49(2):241-264. doi:10.1353/jcr.2021.0012

 グローバル化・ネットワーク

www.mdpi.com

 南アフリカ

journals.openedition.org

超自然現象に対する信念の社会学的研究

 アメリカにおける超自然現象・超常現象に対する信念を調査したオープンアクセス論文。テレキネシやビッグフット、アトランティスなどに対する信念を従属変数とし、それに対する社会人口学的属性との関連を分析している。

 以下、要旨の便宜的日本語訳。

本研究では2020-2021 Chapman University Survey of American Fears(n=1035)を分析した。同調査は、幽霊、ホーンティング、ゾンビ、サイキック、テレキネシス、ビッグフットやサスカッチアトランティス、地球外生命の来訪などの超自然的現象と超常的現象に対する恐怖と信念の検証を目的とした最新の全国調査である。超自然的信念は、他の人口学的特徴と宗教性を調整後に、人種/エスニシティジェンダー、教育でどう異なるのかを検証した。女性は男性よりも全ての非物質的や霊的超自然的現象、アトランティスを恐れたり信じたりする傾向が強い、などの5つのジェンダー差があった。学士以上の人は地球外生命体の来訪、ホーンティング、ビッグフットやサスカッチアトランティスを信じる傾向が弱かった。人種/エスニシティ差が生じる6つの信念と恐怖も明らかになった。本知見は、超自然的現象などの複雑な信念体系がジェンダー、教育、人種/エスニシティと強く関連することを浮き彫りにした。

信仰に基づく組織(FBO)にかわる概念を提案したレビュー論文

  • Sarah Maes , M. Schrooten , P. Raeymaeckers & B. Broeckaert (2023) Faith-based organizations and poverty alleviation: a scoping review on definitions and terminology (2010–2021), Journal of Religion & Spirituality in Social Work: Social Thought, DOI: 10.1080/15426432.2023.2270930

 FBO(信仰に基づく組織)に変わる概念としてRSIs(religion-based solidarity initiatives、宗教に基づく連帯イニシアティブ)を提案したレビュー論文。

 以下は論文要旨の便宜的日本語訳。

本論文では、貧困緩和の分野で活動する信仰に基づく組織(FBOs)に関する科学的文献(2010-2021)を、FBOという用語の定義と使用方法に焦点を当てながら調査したスコーピングレビューの結果を報告する。52件の関連研究が特定され含まれた。研究の結果、FBOsという用語は主にアメリカの研究で使用されていることが明らかになった。さらに、この用語の正確な定義や意味、その範囲についての大枠のコンセンサスはない。この用語のコンセンサスの欠如と特有の欠点ゆえに、FBOという用語を「宗教に基づく連帯イニシアティブ」(RSIs)という用語に置き換えることを提案する。RSIsを「宗教的インスピレーションから、弱い立場の人々への集合行動の組織化やサポート提供を目的とするイニシアティブ」として定義する。これらのイニシアティブは、小規模な特定の目的のためのイニシアティブから、大規模なフォーマル組織にまでわたる。

 同一著者らによるFBOのタイポロジーに関するレビュー論文でも、コンセンサスを得らえるような定義を見出すことはできないことが指摘されていた。

shterazawa.hatenablog.com

台湾を中国研究の視点から分析することの重要性

 『日本台湾学会報』(第23号、2021年)に掲載されている、『中国・台湾・香港の現代宗教:政教関係と宗教政策』(櫻井義秀編著、明石書店、2020年)に対する藤野陽平氏の書評の中で、台湾を研究する上での重要な指摘がなされている。私が常々感じていることであり、深く賛同するところである。

 抜き書き。

[寺沢注:書評を行うことに関して]我ながら何にそれほど引っかかっていたのかというと、おそらくタイトルの「中国・台湾・香港」というこの3者の並び順であったのだろう。実際の本文では中国・香港・台湾の順に並んでいるので、些末な問題なのかもしれない。しかし近年北京政府から「中国台湾」の名称を各国の企業に求めるなど圧力が強まる中、台湾が中国と香港(やマカオ)の間に挟まれることに過敏になってしまっている台湾研究者は何も私だけではないであろう。

(藤野2021:266)(下線は寺沢)

日中社会学会の企画で「中国社会研究叢書」のシリーズの9冊目として刊行された本書を冒頭でも述べたように評者はあくまでも中国研究に位置付ける。中国でのフィールド調査が困難である時代の台湾の宗教研究は中国研究の一環、代替地として扱われてきた。それが、2000年代以降の台湾アイデンティティの高まりに呼応して、台湾は中国とは異なる台湾研究として取り組まれるようになったことはよく知られる。しかし当然、現在の台湾も強い中国の影響にさらされ続けている。台湾は台湾であるというアイデンティティが広がる時代に、中国研究の立場から台湾研究を扱うことの意義を本書は再確認を促してくる。中国を意識せずに暮らせない台湾のあり方を突きつける本書はたとえ中国研究であろうとも台湾研究のジャンルでも適切に評価されるべきである。

(藤野2021:271)(下線は寺沢)