2009年新型インフルエンザの台湾におけるワクチンなどの摂取(Chan et al. 2014)

更新2021年5月27日

journals.plos.org

  • Chan TC, Fu Yc, Wang DW, Chuang JH (2014) Determinants of Receiving the Pandemic (H1N1) 2009 Vaccine and Intention to Receive the Seasonal Influenza Vaccine in Taiwan. PLOS ONE 9(6): e101083. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0101083

  台湾のインフルエンザワクチン接種をテーマとした社会疫学・公衆衛生学的研究。台湾では政府支援のインフルエンザワクチンは1998年に開始した。2009年新型インフルエンザワクチンについてもその呼びかけなどに力を入れてはいるものの目標接種率にはなかなか届かない現状である。

 どのような人々が2009年新型インフルエンザワクチンを接種したのか、そしてどのような人が季節性インフルエンザワクチンを接種する意思があるのか、その規定要因を探ってみようというわけである。
 台湾全土規模のサンプリングデータを使用している。ロジット分析の結果をみると、過去に季節性インフルエンザワクチンを接種したことのある人などが2009年新型インフルエンザワクチンを接種した。インフルエンザ流行を危惧している人、過去に接種したことのある人などが、季節性インフルエンザ接種の意思のある。逆に言えばこれら以外の人々にはインフルエンザワクチンの接種および接種の重要性があまり認識されていないようである。
 クロス集計においては、「テレビで政治的討論を見る傾向にある人」が接種しない傾向にあり、かつ接種する意思もない傾向にあるという点が興味深い。本論文によると2009年新型インフルエンザワクチンのころには、このインフルエンザやワクチンをめぐる政治的対立が頻繁にテレビで放映されていたという。
 確かに日本でも「新型インフルエンザだと騒ぎ過ぎだ」「ワクチンは効果はない、体に有害である」といった反予防医学的な言説がしばしば飛び交ったような記憶がある。医療が政治的議論に巻き込まれると、それを視聴する人の医療・健康行動にも影響するということなのかもしれない。