アフリカ系アメリカ人における飲酒(Martin et al. 2003)

更新2021年5月31日

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

  • Martin JK, Tuch SA, Roman PM. Problem drinking patterns among African Americans: the impacts of reports of discrimination, perceptions of prejudice, and "risky" coping strategies. J Health Soc Behav. 2003 Sep;44(3):408-25. PMID: 14582316.

 差別研究に位置づけられる論文。差別を受けることによって精神的健康含めた様々なネガティブな結果がもたらされる。本論文は飲酒を「問題のある行動」「ネガティブな結果」の一つとみなし、差別を受けることが飲酒とどのように関連するかを論じている。アフリカ系アメリカ人を対象とした大規模調査の結果、確かに差別を受けた経験は飲酒と関連するという知見が得られているという。

 本論文を通じて、仮に飲酒を「問題のある行動」とみなして、これを抑制していくような動きがあったとしても、その背後にある差別を視野に入れずに抑制をしていくのであれば、背景要因を含めた動きにはならないのではないかと感じた。私見の限り、飲酒や喫煙などはその行動そのものが時に批判の対象になり、時に差別の対象になることがある。その例として山本・他(2014)が参考になる。いわば二重の差別が発生しうる危うさを本論文は示唆しているように思われた。

参考文献

  • 山本雄大佐藤潤美・大渕憲一(2014)「喫煙者に対する否定的評価と差別」『心理学研究』85(2):121-129。