『禁煙・受動喫煙教育新論』(松尾2019)

  「第II部 禁煙・嫌煙受動喫煙)運動の歴史」(pp.121-208)で禁煙運動史の諸相が取り上げられている。特に第6章(pp.122-158)が詳しい。

  その中で、日本における禁煙運動と宗教に関する箇所もあり、「日本キリスト教婦人矯風会」、セブンスデー・アドベンチスト教団由来の「日本禁煙協会」の2団体が、歴史のある重要な禁煙団体であると指摘されている(pp.129-130)。そして、次のように論じられてる。

 このように、日本における最も古い歴史をもった、あるいは、最も代表的民間禁煙団体である前述の2団体は、キリスト教と関係をもっていた。その点では、禁煙運動と宗教活動は密接な関係をもっていたのである。キリスト教(宗教)と禁煙とが結びつくのは、次の二つの理由からであろうと思われる。第1は、タバコは健康を害するという点で、生命を神聖なものとする宗教の原則に反するという理由である。第2は、タバコを吸わずにいられないという欲望や習慣にとらわれた人では、やはり宗教の原則である、個人の自由な意思が否定されるという理由があげられよう。

 

(出典)松尾正幸(2019)『禁煙・受動喫煙教育新論─21世紀家庭・学校・地域社会からのアプローチ』世論時報社、p.130。