『心でっかちな日本人』(山岸2010)

 社会学者・社会心理学者の山岸俊男氏の著作。

 「いじめの原因は、子供たちの倫理感の欠如である。だから、これからは子供たちの道徳心や倫理観を高める教育を行うべきだ」といった言説がある。社会問題の発生要因を人びとの心理に収斂させ、その心理を変容によって社会問題の抑止につながるというものだが、それは果たして妥当な説明なのか、という問題意識から本書は始まる。

 結論を極簡単にまとめてしまうと、「人々はそうせざるを得ない状況ゆえにそうしているのである。そうせざるを得ない状況を変えれば人々の行動は変わるのではないか?」というものであるる。

 このような著者の主張を裏付けるにあたって、著者が行ってきた様々な社会実験、集団主義研究などが参照されている(集団主義的と言われる日本人被験者であっても、実験状況を変えることで個人主義的な行動をとる、などである)。

※この記事は、北海道大学付属図書館主催企画「本は脳を育てる」に寄稿した紹介文を大幅に加筆修正して再掲したものです。