同性愛に対する社会的寛容:中国大陸・シンガポール・台湾の量的比較

  • Min Zhou & Tianyang Hu (2020) Social Tolerance of Homosexuality: A Quantitative Comparison of Mainland China, Singapore, and Taiwan, Chinese Sociological Review, 52:1, 27-55, DOI: 10.1080/21620555.2019.1654368

 中国大陸、シンガポール、台湾における同性愛に対する社会的寛容の比較分析。台湾は個人の価値観の違いや階層、年齢、宗教がよりはっきりしているように見受けられる。台湾社会全体での同性愛に対する賛否に着目する以上に、個人の違いに目を向けた議論が必要だと思われる。以下は、アブストラクトの試訳。

本研究は、中華文化儒教の強い影響を受けている三つのアジア社会、中国大陸・シンガポール・台湾について、同性愛に対する公的寛容の社会的関連要因を比較する。同性愛に関する社会政治的環境と公共政策は異なるため、教育、収入、年齢、宗教性などの個人レベルの要因は、三社会で異なる形で影響している。より進歩的な環境にある台湾は、中国大陸とシンガポールに比べて、個人レベルの影響が出る余地が大きい。同性愛に関しては、教育と収入の寛容促進効果と年齢と宗教性の寛容抑制効果は、中国大陸とシンガポールよりも、台湾で有意に明確である。より広範囲にわたる社会政治的環境は、社会全体レベルでの同性愛に対する寛容性に影響するみならず、その社会の中でどのような個人がより寛容なのかにも影響を与える。