中国ファクターの台湾の選挙への影響:2008年から2014年の間に世代を超えてどう変化したのか?

  • Weng, D.L.-C., Chen, L.-H. and Wang, C.-H. (2022), "The effect of China factor on Taiwan's elections: how has it changed across generations from 2008 to 2014?", Asian Education and Development Studies, Vol. 11 No. 2, pp. 248-264. https://doi.org/10.1108/AEDS-02-2020-0041

 中国ファクターが有権者の投票選択に与えた影響をTEDSのデータで分析した論文。中国ファクターが投票選択に対して大きな影響を与えたという知見は、昨今の台湾選挙に関する話題からある程度予測し得るものだが、国民党支持者の中では選挙と世代によるばらつきがあるのは興味深い点の一つではないかと思われる。以下、アブストラクトの便宜的な訳。

目的

本研究の主目的は、中国ファクターが、二大政党に対する台湾の有権者の評価に対して、選挙や世代と交差して、どのような影響を与えるのかを明らかにすることである。1)台湾の高齢者は若年コーホートよりも中国ファクターを深刻に捉える可能性がある、2)選挙のレベルによって中国ファクターの重みづけが異なる可能性がある、と主張する。より重要な点として、中国ファクターは有権者の党派性と交絡していることを議論する。

デザイン/方法論/アプローチ

2008年から2014に実施された台湾の選挙と民主化に関する調査(TEDS)によって、二回の地方選挙と二回の総統選挙における台湾の人々の選挙選択に対して、中国ファクターが与える影響を分析することができる。上記のリサーチクエスチョンに答えるために、本研究ではイシュー投票理論と見かけ上無関係な回帰(SUR)モデルを用いた実証分析を行う。

知見

本研究の知見は、台湾選挙において、政治世代は中国に対する反応をどう変化させたかについての実証的根拠を提供している。最も基本的な変数である政党アイデンティティと中国イシュ―は、依然として極めて重要であり、無視できない。特に、中国ファクターは、民主進歩党(DPP)支持者の選挙選択に対して、世代問わず、極めて大きな役割を担っているのに対して、国民党(KMT)支持者の選挙選択に対しては、選挙の文脈と世代によって、与える影響が異なっている。

オリジナリティー/価値

単項目は選挙選択の効果的な予測因子として十分ではないという疑念もあると推察されるが、台湾選挙においては、特に党派性が絡む場合は、中国ファクターは最も重要な要素であることは明白である。本研究のSURアプローチによって、党派性と中国ファクターを分けて見ることができないことが確認された。