- 蔡維廷・王靖興(2021)「人格特質對台灣大學生政治容忍感之影響」『台灣政治學刊』25(1):97-149 https://doi.org/10.6683/TPSR.202106_25(1).0003
台湾の大学生におけるパーソナリティ特性と政治的寛容性をパネルデータ*1を用いて分析した論文(オープンアクセス)。
以下はアブストラクトの便宜的日本語訳(ビッグファイブパーソナリティはExtraversion・Agreeableness・Conscientiousness・Emotional stability・Open to experienceが使用されている。それぞれ外向性、協調性、誠実性、情緒安定性、経験開放性と訳した)。
本研究ではパーソナリティ特性と政治的寛容の関係を検討する。台湾の先行研究では心理的要因と政治的寛容性の関係が分析されていないため、本研究ではビッグファイブパーソナリティー外向性・協調性・誠実性・情緒安定性・経験開放性ーの大学生の政治的寛容性への影響を検討した。本研究では「我が国の大学生の政治的社会化に関する縦断研究」の第四年調査データを使用し、順序ロジットモデルで性格特性と政治的寛容性の関係を分析した。分析の結果、協調性と経験開放性の二つのパーソナリティ特性が大学生の政治的寛容性に有意な影響を与えていることが明らかになった。具体的には、協調性パーソナリティ特性が高い回答者ほど、政治的寛容性が低くかったが、経験開放性パーソナリティ特性が高い回答者ほど、政治的寛容性が高かった。また、誠実性と情緒安定性の二つのパーソナリティ特性にも、政治的寛容性に対する部分的影響力があった。一方で、外向性パーソナリティ特性と政治的寛容性は関連しないようであったものの、パーソナリティ特性の大学生の政治的寛容性に対する影響を性別で比較すると、外向性パーソナリティ特性が顕著に高い女子大学生ほど、政治的寛容性が低く、さらに、誠実性パーソナリティ特性が政治的寛容性に与える影響は女子大学生と男子大学生で異なっていた。結論として、本研究はパーソナリティ特性が大学生の政治的寛容性に影響を与える重要な説明変数であることを実証し、女性と男性でパーソナリティ特性が政治的寛容性に与える影響が異なるという予備的知見を提供した。このことは、政治的寛容関連研究の発展にとって重要な意義を有する。すなわち、個人の政治的寛容性の分析を進めるにあたっては、文脈的、態度的、行動的要因に加えて、パーソナリティ特性という心理的要因も考慮すべきなのである。
*1:「我國大學生政治社會化的定群追蹤研究」(我が国の大学生の政治社会化に関する縦断研究)。二次データとして公開されている(https://doi.org/10.6141/TW-SRDA-E10053_4-1)