台湾の青少年における就労と酒・たばこ・ビンロウ(檳榔)(Chen et al. 2006)

更新2021年5月31日

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

  • Chen CY, Chen WC, Lew-Ting CY, Lee CM, Yen CF, Chen DR, Hsiao CK, Lin CC, Yang MJ, Lai TJ, Chen WJ. Employment experience in relation to alcohol, tobacco, and betel nut use among youth in Taiwan. Drug Alcohol Depend. 2006 Oct 1;84(3):273-80. doi: 10.1016/j.drugalcdep.2006.03.003. Epub 2006 Apr 5. PMID: 16600528.

  台湾の青少年において、どのような仕事、就労状況にある人が、酒、たばこ、ビンロウ(檳榔)という嗜好品を嗜む傾向にあるかどうかを確認した論文。

 いずれの嗜好品に対しても興味があるのだが、ビンロウが取り上げられているのが目に留まる。日本ではあまりピンと来ないに違いないが、台湾では馴染み深い。緑色の葉で包れた飴玉程の大きさのもので、地元客向けの商店街や繁華街でビンロウ店をしばしば目にする。一頃の台湾では「檳榔西施」(人目を引くようなファッションスタイルの女性ビンロウ販売者)の姿を目にすることが多かった(野林2008)。台湾のライフスタイルや嗜好品を考える上でビンロウの存在に目を向けないわけにはいかない。もちろん他の嗜好品との関連も重要である。
 本論文は青少年の嗜好品の使用について、特に就労状況との関連に着目している。主要な知見は要旨の通りである。職業状況が嗜好品の使用に対して相対的に明確な関連を示し、そもそも就業している青少年はそうでない青少年よりも嗜好品を使用する傾向にある。飲食店における就業といった業種の違いも見られると指摘されている。
 興味深い結果であると思われる。台湾の青少年の嗜好品使用には、職業文化としての側面があることを示唆しているのかもしれない。ビンロウに関してはいわゆる肉体労働との関連も指摘されている(野林2008:73)ため、職業文化的なのかもしれない。本論文は青少年の健康に焦点を当てたものではあるが、ビンロウを含む嗜好品の特性をより深く知るためには、成人も含む台湾の全体的な動向の把握が必要であろう。日本でも何かしら台湾と似たような傾向が見られるものなのかどうかも気になるところではある(なお、宗教と嗜好品の分析したChen(2014)、これも面白そうである)。
参考文献
  • Chen, Chiang-Ming (2014) “The Influence of Religious Affiliation on Heavy Drinking, Heavy Smoking and Heavy Betel Nut Chewing,” Addictive Behaviors 39 (1): 362-364.
  • 野林厚志(2008)「ビンロウ」高田公理・嗜好品文化研究会編『嗜好品文化を学ぶ人のために』世界思想社:71-75。