「「ふつうさ」の固有文化心理学的研究」(大橋・山口2005)

更新2021年5月31日
  • 大橋恵・山口勧(2005)「「ふつうさ」の固有文化心理学的研究─人を形容する語としての「ふつう」の望ましさについて」『実験社会心理学研究』44(1):71-81 。

 人を形容する際に「ふつう」という表現を使う場面は少なくない。何か特段印象深い特徴は見られず、平均的、一般的な人という意味である。それでは、その「ふつう」という表現は実際にどのようなニュアンスが含まれているのか。「ふつう」という言葉を用いて人々は何を表現し、また聞いた人々は何をイメージするのか。

 本論文は、調査票調査を用いて「ふつう」という形容の意味を検討したものである。タイトルには「固有文化心理学」と書かれていることから、本論文が解明するのは心理現象一般ではなく、日本の文脈に関心を向けた心理学を志向したものである。日本地域研究的心理学と表現することも可能だろう。
 方法は「ふつうの人」「悪い意味でふつうではない人」などを具体的に思い浮かべてもらい、その人について様々な評価をしてもらうという手順である(p.73)。
 人を形容する際の「ふつう」には肯定的なニュアンスが含まるという。利他的な傾向など、様々なパーソナリティとの関連も分析されている(pp.74-77)。
 本論文が明らかにした通り、日常生活の場面において、ポジティブなニュアンスで用いられることは確かに少なくないように思う。