「現代家族における資産形成の規定要因」(星2001)

更新2021年5月31日

ci.nii.ac.jp

 資産形成に対してどのような社会的要因が関連しているのかを検討した論文。1998年に実施されたデータを分析したもの。

 ミクロデータで資産形成を分析する上でややこしくなるのは、資産の測定方法であろう(p.39)。本論文でいう「資産評価の正確さ」(p.37)である。株式、投資信託、土地などの時価評価で決まる資産の場合、どの時点のもので評価すればよいのか、回答者自身も頭を悩ますに違いない。複数の資産を持つ場合、さらに把握は難しくなる。具体的な指標(従属変数)を見てみると、金融資産をもっているか否か、不動産をもっているか否かが取り上げられている(p.39)。
 分析結果として、興味深いと思ったのは、一口に資産といっても、金融資産と不動産によって、規定要因が異なる点である。金融資産は親世代との明瞭な関連は確認されない一方、不動産に関しては親世代との関連が比較的明瞭であるという(p.36)。すなわち、「不動産資産については夫の親が農林水産業従事者や自営業者、上層ホワイトカラーであることが所有率を高めるという結果であった」(p.36)と指摘されている。これはおそらく、事業用不動産を所有しているケースも少なくないのではないかと推察するが、日本における資産形成というものが不動産を中心になされていることも示唆しているように感じる。日本における資産の中の不動産というものの位置づけについて、現在の分析結果はどのようになのだろうかという点も含めて、より深めていく必要がありそうだ。