「日本の心理学関連分野における青年期の性行動に関する研究の動向と展望」(森・石丸2019)

更新2021年3月31日

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  • 森裕子・石丸径一郎(2019)「日本の心理学関連分野における青年期の性行動に関する研究の動向と展望─青年期女性の性行動の特徴に着目して」『お茶の水女子大学心理臨床相談センター紀要』21:77-88。

 J-Stageを用いて論文81本をピックアップし(p.78)、日本で行われてきた青少年の性行動研究(心理学が中心)をレビューしたもの。社会学や医療関連の論文もレビュー対象に含まれており、幅広い先行研究を知ることができる。考察パートでは、青年期の女性に関する議論がなされており、女性を対象とした研究の方向性を示唆するものともいえる。

 読んでみた感想としては、「性行動」は誰の視点から見るのかによって、その意味するものが多分に複雑な状況になっているのではないか感じたた。例えば、非行少年は性に関する知識は先輩から得る傾向にあるという知見がある(p.81)。また、女性においては母と娘の間で共有される傾向にあるという知見もある(p.85)。このような状況が見られるのであれば、同じく「性行動」という言葉を聞いたとしても、そこから想起するライフコースや社会関係はいささか異なる可能性があると推察する。同じ男性であっても非行少年とそうではない少年とでは「性行動」の意味合いがずれてくるだろうし、母と娘においても良好な関係にあるかどうかで意味合いが異なることもあろう。
 考察では、性に関する話が羞恥心と関連するがゆえに、調査研究は容易ではないことが指摘されているが(pp.84-85)、こうした話しにくさというものが、性行動の意味合いを日常生活レベルにおいてもより多義的かつ不透明にしているのかもしれない。