コロナ禍は性行動をどう変えたか?(Lehmiller et al. 2020)

更新2021年5月30日

  • Justin J. Lehmiller, Justin R. Garcia, Amanda N. Gesselman & Kristen P. Mark (2020) Less Sex, but More Sexual Diversity: Changes in Sexual Behavior during the COVID-19 Coronavirus Pandemic, Leisure Sciences, DOI: 10.1080/01490400.2020.1774016
 コロナ禍が人々の性行動をどのように変えたのかを分析した論文。2020年の3月から4月にかけて実施したインターネット調査がデータである。コロナ禍に伴うソーシャルディスタンスの推進によって人々のライフスタイルは様々な変化を余儀なくされている。
 その一つがとして注目すべきが性行動である。性行動には直接的な接触が不可欠であり、ソーシャルディスタンスから最も遠い行動の一つだと推察されるからである。本論文は性行動の実態や意識との関連を検討している。
 気に留まった点をいくつか箇条書きにしてみる。
(1)論文タイトルで端的に表現されているように、頻度の低下と多様化の両方が進んでいることが指摘されている(Table2~4)。紹介されている分析結果はより詳細だが、おおよそのところは、恋人同士でチャットやSNSなどを活用した会話、行動を行っているといった傾向を読み取ることができる。
(2)性行動に関する調査項目がとても参考になる。単にセックスの頻度や回数を尋ねるのではなく、たとえば、何らかのアダルトグッズを使用するか、ウェブカメラを使用するか、オーラルセックスを伴うものなのかなどの具体的かつ網羅的な指標が用いられている。ポルノをみる、自慰を行うなどの関連項目もあり、性行動・性意識の測定を考える上で参考になると思われる。
(3)問題設定やインプリケーションなどにも興味深い解説が含まれている。性行動をめぐる諸制度の動向、論文のテーマと直結する参考文献などである。これらを辿ると面白そうである。