【刊行】『中国生活を支えた仲間 (第4回「忘れられない中国滞在エピソード」受賞作品集)』(段躍中編、日本僑報社、2021年)

 第4回「忘れられない中国滞在エピソード」の受賞作品集『中国生活を支えた仲間』が刊行されました(日本僑報社)。

 私は同コンテストの三等賞を受賞し、本書に収録されています。

 「中国と不可分の北海道─コロナ、インバウンド、地域経済」(pp.97-99)

【表彰式・近刊】第4回「忘れられない中国滞在エピソード」の表彰式、受賞作品集『中国生活を支えた仲間』

 第4回「忘れられない中国滞在エピソード」(日本僑報社)の表彰式が開催されます。

 2021年11月28日(日)14:00-15:00(Zoom)

 私も表彰されます。

 受賞作品集『中国生活を支えた仲間』も刊行されます。

 拙稿も収録されます。

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duan.jp 2021年11月5日閲覧

台湾は独立すべきか、統一すべきか(2016年)

 2016年実施の台湾社会変遷基本調査の結果を整理。

 独立か統一かを尋ねる設問には様々なものがあるが、この調査では「独立」「統一」「現状維持」を組み合わせながら尋ねている。

表1 台湾は独立すべきか、統一すべきか(2016年実施台湾社会変遷基本調査)
すぐに統一 47 2.5% 1865
すぐに独立 104 5.6% 1865
現状維持(その後統一に向ける) 193 10.3% 1865
現状維持(その後独立に向ける) 339 18.2% 1865
現状維持(独立/統一は将来的に決める) 660 35.4% 1865
現状維持(ずっと続ける) 511 27.4% 1865
その他 3 0.2% 1865
状況による 8 0.4% 1865
合計 1865 100.0% 1865
(出典)傅仰止・章英華・廖培珊・謝淑惠主編(2017)『台灣社會變遷基本調查計畫第七期第二次調查計畫執行報告』中央研究院社會學研究所(2021年10月28日取得、https://www2.ios.sinica.edu.tw/sc/cht/datafile/tscs16.pdf)の「H10 關於台灣和大陸的關係、這張卡片上有幾種不同的看法、請問您比較偏向哪一種?」(p.330)より寺沢重法作成。DK・NA回答は除外した。

 全体的な傾向をみると、現状維持で将来的に決める、あるいは現状維持を望む人は約63%、独立が約24%、統一が約13%、といったところのようである。

二二八事件・美麗島事件・中華民国建国・抗日戦争勝利をどこまで重要だと思うか(2013年)

 台湾における様々な歴史的事件に対して、台湾の人々はどの程度重要だと思っているのだろうか。台湾社会変遷基本調査の結果をメモする。

 2013年に実施された第六期第四次調査に設問が含まれている。

 二二八事件、美麗島事件中華民国建国、抗日戦争勝利という歴史的事件が列挙され4件法で尋ねている。

 結果は以下の表の通りである。

表 台湾における歴史的事件の重要度(2013年実施台湾社会変遷基本調査)
  二二八事件

美麗島事件

党外民主運動

中華民国建国

抗日戦争勝利
度数 % 度数 % 度数 % 度数 %
とても重要である 518 28.9% 336 19.3% 447 25.0% 564 31.3%
重要である 934 52.0% 764 43.9% 801 44.8% 924 51.3%
重要でない 302 16.8% 529 30.4% 434 24.3% 275 15.3%
全く重要でない 41 2.3% 111 6.4% 107 6.0% 39 2.2%
合計 1795 100.0% 1740 100.0% 1789 100.0% 1802 100.0%
(出典)傅仰止・章英華・杜素豪・廖培珊主編(2014)『台灣社會變遷基本調查計畫第六期第四次調查計畫執行報告』中央研究院社會學研究所(2021年10月27日取得、https://www2.ios.sinica.edu.tw/sc/cht/datafile/tscs13.pdf)の「54. 請問您覺得下列這些歷史事件是不是很重要,要讓下一代永遠記得?(a)二二八事件(b)美麗島事件、黨外民主運動(c)推翻滿清,建立中華民國(d)八年對日抗戰勝利」、選択肢「非常重要」「重要」「不重要」「非常不重要」(pp,211-212)より寺沢重法作成。DK・NA回答は除外した。

 全体としてみると、いずれの事件についても、重要であると考えている人が多い様子が見受けられる。個別に見ると二二八事件と抗日戦争勝利は相対的に重要視され、美麗島事件中華民国建国はそうでもない印象である。

計量的地域研究(有田2006:13)

 韓国における教育と社会階層の関連を計量社会学的に論じた有田伸『韓国の教育と階層』(東京大学出版会、2006年)の中で「計量的地域研究」という概念が提起されている。

 様々な統計データを駆使した地域研究というのがおおよその意味である。

 「計量的地域研究」を論じた箇所を引用する。

より生産的で実りある「計量的地域研究」を行おうとする筆者の意図に基づくものである。分析対象に関して、「コンテキストを重視する研究者は質的分析をおこな」い、「自然科学により近い立場の研究者は、統計的手法を駆使して計量的比較研究を進める」(鹿又[2004:1-2])という傾向は確かに存在する。しかし計量分析と地域研究とは、根本的に決して相容れない存在というわけではなく、計量的手法を適切に使いさえすれば、「対象の文脈を重視した計量研究」は十分に可能であると考える。

 

(出典)有田伸(2006)『韓国の教育と社会階層─「学歴社会」への実証的アプローチ東京大学出版会:13。下線は寺沢重法が加えた。

 私の見解を補足すると、「何が対象地域の文脈なのか」「事例が埋め込まれている文脈とはそもそもどのようなものか」を把握する上でも計量分析は強さを発揮するのではないかと考える。海外のどこを対象地域とするかによると思われるが、日本に伝わる情報はメディアでの報道に依拠したものが少なくないように推察する。近年はブログやSNSで発信される情報も少なからぬ影響力をもっていよう。

 しかしながら、それらが対象地域全体のどの部分に光を当てたものなのかがわかりにくい印象がある。日本国内の事例であれば、どの部分を切り取ったものなのかを推察し、それを日本社会全体の中に位置づけて考えることはある程度可能かもしれない(もちろん一筋縄にはいかないだろう)。

 それに対して、海外の場合、そもそもその社会の全体像がわからないことがある。日本に伝わる情報には観察者の視点や関心も加わっている。そのため、事例を対象地域全体の中に位置づけて考えることが、格段と難しくなるのではないだろうか。大雑把にいえば、「質的調査における代表性の限界」の問題が発生している。

 この問題を解決する方法の1つが、まさに「計量的地域研究」ではないかと推察する。対象地域に関する代表性の高い社会調査があれば、その調査結果をいわば「鳥観図」として活用する。「鳥観図」を確認しながら個別事例の位置づけを確認し、個別事例をみながら「鳥観図」を解釈するわけである。

 「計量的地域研究」という言葉を知ったのはいくぶん前のことであるが、その意義は変わらないどころか、一層高まっているように感じる。

 私が観察している台湾については、以下の過去記事にまとめたことがある。

shterazawa.hatenablog.com 2021年10月26日閲覧

参考文献