『族群』(王2014)

  台湾の社会学者・王甫昌氏による『當代台灣社會的族群想像』(群學出版社、2003年)の日本語訳版。
 族群エスニシティー)概念の説明から始まり、台湾の「四大族群」(閩南人/客家人外省人/原住民(先住民)、そして「四大族群」がいかにして現在の「四大族群」になったのかを説している。族群族群たる正当性を述べるのではなくといった、族群の内実を述べるというよりも、族群が歴史的・文化的・社会的条件によって形成されたことに焦点を当てている。いかにして現在の「四大族群」が成立されるにいたったのかという視点から書かれていると言えよう。
 巻末の文献紹介が充実いる。欧米のエスニシティ―研究を含むエスニシティ―研究の基本書、台湾における族群研究の文献まで幅広く取り上げられている(電子化されているものも少なくない)。文献には簡潔な説明が加えられえているため、何を読んでいけばよいのかがよくわかる。高校生向けの講義を元にしているため、説明は平易である。
※この記事は、北海道大学付属図書館主催企画「本は脳を育てる」に寄稿した紹介文を大幅に加筆修正して再掲したものです。