否定的党派性と投票選択:2004-2020年台湾総統選挙の分析

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 TEDSのデータを用いて、2020年台湾総統選挙における投票行動への否定的党派性の影響を明らかにした論文。

 総統選をめぐる議論では各党や候補者の政策や理念に注目されるが、今後の総統選においては、それらに収斂されないような、有権者の感情もより視野に入れることが肝要になるように思われる。

 以下、アブストラクトの便宜的な日本語訳。

これまで台湾で政治エリート間のみに発生していた対立は、今や一般の人々にも拡大している。特に総統選挙時には、有権者の間の、政策的立場ではなく感情による対立が、台湾の過去5回の総統選挙の結果に影響した。本稿は「否定的党派性」を台湾社会を観察するための「感情的分極化」の指標とし、2004年から2020年の総統選挙について、台湾総統選挙の結果への否定的党派性の影響を検証する。分析の結果、2012年以降、特定の政党に否定的党派性をもつ有権者は、その割合が大幅に増加し、2020年総統選時は、国民党支持者と民進党支持者の4割が敵対政党に否定的党派性もっていたことが明らかになった。一方、政党アイデンティティと統独立場を統制しても、否定的党派性は台湾有権者の投票選択に有意な説明力をもっていた。つまり、ある政党の総統候補への投票の決定については、その政党アイデンティティや政策への支持のみならず、敵対政党に否定的評価をもっているか否かも重要な指標になっていると言える。

 感情的分極化と否定的党派性については、ブラジル大統領選を分析した以下の論考が興味深い。

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