ミクロネシアの檳榔文化をインスタグラムのデータで分析(Buente et al. 2020)

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  • Buente W, Dalisay F, Pokhrel P, Kramer H, Pagano I An Instagram-Based Study to Understand Betel Nut Use Culture in Micronesia: Exploratory Content Analysis J Med Internet Res 2020;22(7):e13954 URL: https://www.jmir.org/2020/7/e13954 DOI: 10.2196/13954

 檳榔に関する社会学関連の研究を探す中で見つけた論文。調査データとしてインスタグラムを使用している点が特に目に留まった。檳榔の社会・文化的側面に焦点を当てた研究の多くは、調査地で直接檳榔文化に接することで行われていると推察する。檳榔がどのように噛まれ、檳榔にまつわるどのような表象が見られるのかをフィールドワークで検討するわけである。そのような対象である檳榔を、本論文はインスタグラムをデータとして行おうとしている。また、分析には内容分析(content analysis)が用いられている点も興味深く思われた。内容分析は、質的データを量的に扱う手法としてしばしば使用されているからである(樋口2020)。

 本論文の研究は檳榔の健康影響に対する関心から行われたものである。イントロダクションなどを読むと、社会・文化的存在としての檳榔を論じた先行研究は、他の嗜好品のそれと比べて多いとは言えないとのことである。檳榔の社会・文化的側面を、インスタグラムを通じて探索することが目的とされている。

 方法については、データの収集や解析にはNetlyticが使用されている。#puguaが付けられた投稿を検索し、抽出された写真や動画について、内容分析の手続きに従ってコーディングを行って量化している。コーディングには、檳榔に関する名前、檳榔とともに写真や動画にはいっているものなどに関連するワードを設定している。

 Table1とTable2では檳榔の葉そのものを扱ったものや、チャモロなどの文化的単語が上位に見られる。Tabel3は#puguaの投稿数を時系列で比較している。2017年前後からその数が大きく増えるようである。デザイナーのJessica Sato氏の檳榔のデザインが人気であることが指摘される(Figure3、Figure4)。

  • JKS(2021年5月26日閲覧)

 先行研究の整理や参考文献などを見ると、本論文のように、SNS上の投稿データを用いた実証研究は、檳榔以外の嗜好品に関してもいろいろ行われているようである。トピックと方法論、ともに興味深いため、適宜、学んでいく必要がありそうである。

参考文献

  • 樋口耕一(2020)『社会調査のための計量テキスト分析 第2版─内容分析の継承と発展を目指して』ナカニシヤ出版。