『台灣民眾的社會意向2004』(瞿・他編2005)

更新2021年7月3日

 台湾で実施されている「台湾社会意向調査」という調査の2004年時点での分析結果を一般向けに書籍としてまとめたものである。
 この調査は電話法で行われている世論調査であり、年に数回行われているものである。その時々のホットトピックを質問している。毎回繰り返して問われる同じ設問に加えて、原住民(先住民)調査、921震災調査、SARS調査など特定のトピックに特化した調査も行われている。データの集計結果、データセット、報告書などは「台湾社会意向調査」のHPからアクセス可能である。
 本書の目次は以下の通りである。
 第一篇 社會意向電話調查計畫
 第二篇 921災區民眾心理調查報告
 第三篇 族群問題
 第四篇 SARS社會情勢調查
 第五篇 政治、教育與社會
 第六篇 兩性關係
 第七篇 色情問題
 文章がわかりやすく、図表も豊富なのでとても読みやすい作りになっている。特に興味深く感じたのは「第三篇 族群問題」「第五篇 政治、教育與社會」「第七篇 色情問題」の三か所である。少しだけ見てみる。
 「第三篇 族群問題」では原住民調査が取り上げられ、原住民の不利な社会状況の理由を原住民自身が「個人の努力の問題/社会構造の問題」のどちらとして捉えているのかが調査結果が述べられている(59頁)。(貧困などを個人の問題/社会の問題のどちらでとらえるかで考え方が割れるところは、日本ともあまり変わらない印象を抱く)。
 「第五篇 政治、教育與社會」で特に興味深いのは、「台湾にとっては、厳令解除以前の蒋経国時代のような時代が比較的良いものである」(130頁)という考え方に対して半数近い人々が肯定的な回答をしていることである(130頁)。調査時点において、いわば「逆コース」的な政治意識が生じていたのかもしれない。
 「第七篇 色情問題」は性風俗の使用に関する調査結果である。ライフコースごとの性風俗の使用傾向などが分析されている。
 注目すべきは本書の巻末に、本書で使用した「台湾社会意向調査」のデータセットを収録したCDがついていることである。特段使用許可があるわけではなく、買った人なら誰でも自由にこのデータセットを分析することができる。読者が各自の興味に応じて自らデータ分析を行うことが可能となっている。