金融社会学に関する論集・テキストの続き(1、2)として、負債、債務、与信などに関する社会学的研究のテキストなどを整理してみる。ここでは書籍を取り上げる(かつて「寺沢重法のサイト」で公開していた資料の一部に基づき、また寺沢(2020)を補足する)。
まず、債務に関する最新のものに『The Sociology of Debt』がある。書名の通り債務や負債に関する社会学である。
序章が概論であり、以下、各章で個人レベルの債務から国家レベルの債務まで幅広い議論が行われている。次の書評がある。
- Bayraktar, A. Y. (2020). Book Review: Mark Featherstone, The Sociology of Debt. Sociological Research Online, 25(4), 736–737. https://doi.org/10.1177/1360780420904745
心理学や消費者行動研究などの分野からのアプローチがなされており、社会学に関連するテーマも様々な形で含まれている。なお、Consumer Financeを直訳すると消費者金融になる。だが本書で取り上げられるのは、クレジットカード、貸金業、ネット保険、金融教育などである。無担保個人貸付を意味するところの、日本語でいう消費者金融とはニュアンスが異なるである。個人における債務を中心とする金融行動と理解しておくのがよさそうである。
負債と深く関わるのは、第3部と第4部である。特に、大学生のクレジットカード使用(第11章)、破産(第22章)、貸金業の規制(第24章)である。また、エスニシティ―(第16章、第17章、第18章)やジェンダー(第15章)との関連も扱われている。
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参考文献
- 寺沢重法(2020)「文献紹介『With a Little Help from My Friends(and My Financial Planner)』Mariko Lin Chang 」『理論と方法』35(1):159。