ポルノに対する科学的批判を分析した論文(Perry 2021)

更新2021年5月30日

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  • Samuel L Perry, Banning Because of Science or In Spite of it? Scientific Authority, Religious Conservatism, and Support for Outlawing Pornography, 1984–2018, Social Forces, 2021;, soab024, https://doi.org/10.1093/sf/soab024

 セクシュアリティ研究者のJustin Lehmiller氏のTwitterで紹介されていた論文。 

 Lehmiller氏が説明するように、反ポルノ派はなぜポルノを科学的に批判するのか、という問いを扱った論文である。

 私自身の見聞の範囲でもこれは気になる問題である。動画サイトでアメリカの反ポルノ派の動画などを見ていると、確かにポルノを科学的に批判しているものをしばしば見かける。たとえば、ポルノを視聴した際の脳画像が解説されたり、ポルノ依存症の問題が言及されたりする。反ポルノ派の重要なアクターであろう福音派によるものもである。 道徳的批判や宗教的批判があまり目立たなかったため、意外に感じたことがある。

 本論文の要旨を見ると、本論文はGSSの複数年のデータを使用し、ポルノに対する賛否や宗教性、科学に対する信頼の関連とその変化の動態を分析しているという。

 ポルノを扱った論文だが、ポルノの枠を超えて、「逸脱行動」一般に対する批判の論拠を分析した研究としても貴重だと思われる。たとえば、ゲームである。ゲームばかりをするのは良くないといういわば規範的批判ではなく、なぜゲーム脳やゲーム依存症といった科学的論拠に基づいた批判がなされるのか。たばこも該当するかもしれない。たばこはマナー違反だという規範的ではなく、発がんリスクやニコチン依存症などの批判がなされる。科学的に妥当かということそのものではなく、科学的な説明が説得力のある論拠として用いられている状況である。このような現象を鑑みるに、本論文は様々な面で参考になりそうである。