「性依存に関する研究動向と課題─問題あるポルノグラフィ利用の特徴から介入に向けて」(岡部・伊藤2021)

ci.nii.ac.jp

  • 岡部友峻・伊藤大輔(2021)「性依存に関する研究動向と課題─問題あるポルノグラフィ利用の特徴から介入に向けて」『発達心理臨床研究』27:49-57。

 PPU(Problematic Pornography Use)に関する動向論文。PPUとは、ポルノ依存症を含む、ポルノの論題のある利用を意味する。海外ではPPUに関する実証研究が行われているもののの、日本ではほとんど行われていない(pp.49-50)。本論文では、ポルノの定義から始まり、診断基準、発症メカニズム、治療法などが整理されている(p.50-52)。依存症研究、臨床研究などの議論が中心である。

 今後の課題が示唆的である(pp.52-53)。まず、PPUに関する苦痛の自己申告が、宗教観・道徳観によって実態と異なるものになる可能性が指摘されている。これに関して、Grubbsらの研究が挙げられている。また、日本で研究する上での調査精度や測定法も指摘されている。

 確かに、PPUに関する海外の研究(PPUを明記しないものも含む)はしばしば目にするが(Jochen and Patti 2016)、日本の研究はあまり目にしない。本論文は、概念の部分も含めて詳解しているため有用である。文化差も十分に念頭に置く必要があろう。

参考文献

  • Grubbs, J.B., Perry, S.L., Wilt, J.A. et al. Pornography Problems Due to Moral Incongruence: An Integrative Model with a Systematic Review and Meta-Analysis. Arch Sex Behav 48, 397–415 (2019). https://doi.org/10.1007/s10508-018-1248-x
  • Grubbs JB, Kraus SW, Perry SL. Self-reported addiction to pornography in a nationally representative sample: The roles of use habits, religiousness, and moral incongruence. J Behav Addict. 2019 Mar 1;8(1):88-93. doi: 10.1556/2006.7.2018.134. Epub 2019 Jan 11. PMID: 30632378; PMCID: PMC7044607.
  • Jochen Peter & Patti M. Valkenburg (2016) Adolescents and Pornography: A Review of 20 Years of Research, The Journal of Sex Research, 53:4-5, 509-531, DOI: 10.1080/00224499.2016.1143441