社会科学のデータ分析のテキスト。「因果関係」(第2章)や「発見」(第5章)などの方法論的ついて、実際の研究をRとR Studioを使って追体験しながら学ぶ。書評に太郎丸(2020)などがある。
雑感
- 太郎丸(2020)が指摘するように、近年刊行された興味深い論文が題材として取り上げられている(太郎丸2020:339)。最近の時事問題に則していえば、アフガニスタンにおけるタリバンなどによる民間人の被害に関する調査研究が挙げられるだろう(第3章)。
- 入門書だが、内容は相当なボリュームがある。社会調査や社会統計学などの馴染みがない場合、読み進めるのは容易ではないかもしれない。実験法を取り上げた「因果関係」(第2章)は、心理学における実験研究の背景知識がある方がより読みやすいのではないだろうか。そのような意味では、基本統計量から多変量解析までを段階的に学ぶスタイルのベーシックなテキストを事前に読む、あるいは本書と併読する方が理解がより深まるように思う。「イントロダクション」(第1章)でRの使用方法を学び、「測定」(第3章)、「予測」(第4章)、「発見」(第5章)と進み、最後に「因果関係」(第2章)という学習順も有効かもしれない。
- 因果関係、特に実験法に紙幅を割いているのが本書の大きな魅力の1つである(太郎丸2020:339)。「因果関係」(第2章)である。近年の社会科学では実験研究の重要性が高まりつつあり、オンラインを用いた実験も行われている(竹内2020)。実験を用いた研究を行わないスタンスをとる場合でも、何らかの形で実験研究に馴染むことが重要になると推察する。本書はそのための有用なテキストである。
参考文献
- 竹内麻貴(2020)「小特集 オンラインによる新しいデータ収集法」『理論と方法』35(1):90-91。
- 太郎丸博(2020)「書評 『社会科学のためのデータ分析入門(上・下)』今井耕介著(粕谷祐子・原田勝孝・久保浩樹訳)」『理論と方法』34(2):339-340。