日本では様々な「日本人論」が語られ、書籍として出版されてきた。古くは『武士道』『菊と刀』などの古典から始まり、概ね高度経済期からバブル期にかけては『「甘え」の構造』『ジャパンアズナンバーワン』が刊行され、近年は『国家の品格』などが刊行された。小林よしのりの『台湾論』も日本人論の1つといえよう。
それでは、そもそもなぜ「日本人論」が生産され、流通してきたのか?
本書では、その背景要因として日本人が抱える不安感や、揺らぐアイデンティティなどの社会的・心理的要因を探求する。
「サムライ」「武士道」といったステレオタイプ的、オリエンタリズム的日本人観に留まらず、今日でも日常的に使われる概念である「人間」「職人」などに「日本人的なるもの」がどのように見て取れるのかを論じている。これが本書の大きな魅力の1つだと考える。
※この記事は、北海道大学付属図書館主催企画「本は脳を育てる」に寄稿した紹介文を大幅に加筆修正して再掲したものです。